【ワシントン=赤木俊介】米航空宇宙局(NASA)のネルソン長官は25日、米宇宙企業スペースXを率いる起業家のマスク氏がロシアのプーチン大統領と定期的に接触していたという報道を受け「事実であれば、NASAや国防総省、米情報機関にとって懸念すべき事態だ」と述べた。「調査する必要がある」との考えを示した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、マスク氏は2022年後半からプーチン氏や周辺の政府高官とやり取りをしていた。米欧とロシア政府高官の話として報じた。
ロシア国営タス通信によると同国のペスコフ大統領報道官は25日、プーチン氏とマスク氏は22年以前に一度やり取りをしたのみで、WSJの報道は「事実ではない」と否定した。
スペースXは米国の宇宙開発にとって不可欠だ。NASAの月面有人探査計画「アルテミス」はスペースXの大型宇宙船「スターシップ」を利用する予定で、国際宇宙ステーション(ISS)の補給や探査機の打ち上げにも同社のロケットがすでに使用されている。
スペースXは、安全保障上の重要性も増している。21年には同社衛星通信事業「スターリンク」を偵察や弾道ミサイルの察知など軍事利用に特化させた「スターシールド」を米政府に提供する契約が結ばれた。
スペースXはロシアによる侵攻が続くウクライナでもスターリンクのサービスを提供している。
マスク氏は、22年9月にウクライナ軍がロシアの黒海艦隊司令部を無人機で攻撃するためにスターリンクへの接続を要請した際、断っている。同氏は23年9月、「(ウクライナ軍は)停泊したロシアの艦隊を攻撃するつもりだった。容認すれば、スペースXが紛争激化に明確に加担することになる」と弁明していた。
マスク氏は共和党大統領候補のトランプ前大統領を支援するスーパーPAC(政治活動委員会)を立ち上げるなど、トランプ氏の再選に向け後押しを続けている。著名ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏の新著によると、トランプ氏は退任後に最大7回に渡りプーチン氏と電話をした。
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