【ニューヨーク=佐藤璃子】米ゴールドマン・サックスはS&P500種株価指数の今後10年の収益率が年率で3%と過去10年の4分の1にとどまるとのリポートを発表した。これまでテック大手に株価上昇が集中していたことや米国内総生産(GDP)の伸び率の縮小などが要因としている。急激に上昇してきた米株式市場の上昇局面が転換期を迎えているのかどうか、市場関係者の注目を集めている。
米株式市場は過去10年で、低金利や米経済の成長を追い風に記録的な成長を遂げた。ゴールドマンのストラテジスト、デビッド・コスティン氏らが発表したリポートによると、S&P500の過去10年間の総収益率(株価値上がり益と配当を足して元本で割った比率)は年率13%と、1930年以降の10年平均の11%を上回った。
上昇をけん引したのは、アップルやマイクロソフトなどの大型テックを含む、S&P500指数全体の時価総額の36%を占める上位10銘柄だ。リポートは「上位銘柄の株価収益率の高さは、2000年前後のドットコムブームのピーク時以来最も高い水準にある」と指摘する。
株式相場上昇がこうした上位銘柄に集中してきたことが、今後の米国株の収益率の伸び悩みにつながるとしている。上位銘柄の企業が増収と利益率上昇を長期間維持することは極めて困難であるとして、いずれは収益の伸び鈍化に合わせて収益率も小さくなると見込む。
GDPの伸び率低下も懸念材料という。リポートでは、今後10年間にGDPが4四半期にわたりマイナス成長になるとの予想を示した。過去10年間では2四半期のマイナス成長にとどまった。
こうした要因からS&P500の今後10年間の株価収益率は過去10年と比べて相対的に小さくなり、予想される10年物米国債の利回りが4%と仮定すると株式相場の収益率が米国債を下回る可能性が約72%にのぼるとみている。
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