ドイツのベルリンで24日に開幕した鉄道技術の展示会には、世界59の国と地域から2900社あまりが参加しています。
このうち、スイスの鉄道メーカー、シュタッドラー・レールは、水素や蓄電池を動力として選んで走行できる車両を展示していて、電気を供給する架線の少ない地域での活用が期待されるとしています。
また、世界最大のメーカー、中国中車(ちゅうごくちゅうしゃ)は水素を活用して1000キロ以上走行できるとする新たな列車を公開し、来場者の関心を集めていました。
一方、日本の日立製作所は半導体大手エヌビディアのソフトウエアなどを活用し、車両に取り付けたカメラの画像とAIの技術で部品の状態を迅速に把握できる新たなメンテナンス技術を発表しました。
定期交換していた部品の量を故障の予兆を把握して取り替えることで最大30%削減できるほか、燃費の効率化も図れるとしています。
鉄道は二酸化炭素の排出量が少ない交通手段として知られているほか新興国では輸送インフラを強化し経済成長に向けて鉄道ネットワークを拡充する動きもあり、各国のメーカーの競争は激しさを増しそうです。
世界の鉄道市場 30兆円台 高い成長率
世界では、新興国を中心に都市化への対応や人口の増加に加え、脱炭素社会の実現に向けて環境負荷の小さい鉄道への需要が高まっています。
ヨーロッパ鉄道産業連盟によりますと、世界の鉄道市場は去年までの3年間の(2021年~2023年)年間の平均で2018億ユーロ、およそ32兆円にのぼったということです。
さらに、2027年から2029年までの3年間の市場規模は、年間の平均で2408億ユーロ、およそ38兆5000億円にのぼり、年3%の高い成長率が見込まれているということです。
激しい受注競争のなか 日本は
日本政府は海外へのインフラ輸出をめぐり、2025年の受注目標額を34兆円とすることなどを定めた戦略を4年前に策定していて、このうち、鉄道などを含む「モビリティ・交通」の分野では8兆円を目標に掲げています。
一方、成長する鉄道市場をめぐって、世界の鉄道メーカーの間では受注競争が続いています。
中国では2015年に国内の車両メーカー2社が合併して誕生した中国中車が低価格を武器に攻勢を強めていて、その売り上げは日本円で5兆円近くに上ります。
ヨーロッパのメーカーでは、カナダのボンバルディアの鉄道事業を買収したフランスのアルストムやドイツのシーメンスが世界的にビジネスを展開していて、中国メーカーを規模で追う形となっています。
これに対し、日本では日立製作所がイギリスで高速鉄道の車両や保守メンテナンスの業務を受注するなどしていて、事業を拡大しています。
また、アジアでは台湾高速鉄道の運営会社が2023年、新たに調達する車両について日立製作所と東芝から調達することを決めています。
今回の展示会では日本からは鉄道に関わるさまざまなメーカーが参加していて、日本の鉄道の安全性や時間に正確な輸送システムの信頼性などをもとに、どこまで海外展開を進められるか注目されます。
日立幹部「デジタルの知識・ノウハウ活用でキープレーヤーに」
日立製作所のジュゼッペ・マリノ鉄道ビジネスユニットCEOは、今回発表した技術について「列車の信頼性の維持のほか、長期的にはエネルギー削減も進めることができる」としたうえで、「私たちはエネルギー転換とデジタル化の岐路に立っていて競争が激しいのは確かだ。しかし、デジタルの知識やノウハウを活用することで将来のキープレーヤーになることは可能だ」と話していました。
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