【ワシントン=芦塚智子】米上院は17日、民主党議員が提出した体外受精の権利を保護する法案について、採決に進むための動議を否決した。民主は11月の大統領選で人工妊娠中絶と共に体外受精の権利を争点にしようとしている。大統領選直前の採決は「政治的」と反発する共和党議員の大半が反対し、採決に必要な60票の賛成が得られなかった。
動議は賛成51、反対44で否決された。共和議員2人が賛成に回り、5議員が欠席した。法案は連邦法で体外受精の権利を保障し、医療保険会社に体外受精への保険適用を義務付ける内容。
民主は6月にも同じ法案の採決を目指したが共和の反対で失敗していた。大統領選前に再提出したのは、共和が体外受精の保護に消極的との印象を与える狙いがあった。
米世論調査では、米国民の6割以上が体外受精の権利を支持している。中絶とは異なり、体外受精の権利保護には共和内にも原則、支持するとの姿勢が多い。
共和の大統領候補であるトランプ前大統領も、政府や医療保険による体外受精の費用負担を検討していると表明。10日の大統領候補討論会で「私は体外受精に関するリーダーだ」と強調した。
共和議員が民主提出の保護法案に反対した背景には、大統領選前に民主に得点を与えたくない思惑がある。共和のスーン上院議員は「共和党は体外受精を支持している」としたうえで、動議提出を「(民主の)政治的な人気取り」と批判した。
共和議員には、大半の州が体外受精を認めており連邦法による保護は不必要との主張や、民主の法案は信仰上の理由で体外受精に反対する医療関係者らに実施を強いる恐れがあるとの反論もある。
共和議員も独自の体外受精保護法案を提出したが、民主議員が「抜け穴が多い」などとして採決を阻止した。民主、共和両党の政治的な思惑が絡み、超党派による法案の可決が困難になっている。
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