ガソリン車よりも重くなる電気自動車(EV)が普及すると道路への負荷が増し、維持管理費用がかさむ懸念がある。ならば道路舗装の耐久性をアスファルトから高めようと改質剤の実用化が進んでいる。静岡県磐田市の施工現場や製造する花王を訪ねた。
JR磐田駅からほど近い磐田市中心部の中泉地区の市道が、2月23日深夜から翌24日未明にかけアスファルト改質剤を使って舗装工事された。
地元の石川建設(磐田市)が施工し、舗装に使うアスファルト混合物は中村建設(浜松市)や福田道路(新潟市)を経営母体とする磐田市内の製造プラント「イワレキ」から運ばれてきた。
舗装したての道路が黒々とみえるのは原油由来のアスファルトによるが、アスファルト混合物の9割超は「骨材」と呼ばれる石や砂。わずか5%ほどのアスファルトで骨材を接着している。
車の荷重による負荷のほか、夏場の高温や多量の雨水にさらされてアスファルトが溶けたりはがれ落ちたりすると、舗装が崩れて傷む。
イワレキでアスファルト混合物に加えられた改質剤「ニュートラック 5000」は、花王が強みを持つ界面活性技術でアスファルトと骨材との接着性を強めはがれにくくする。熱や荷重に対しても変形しにくくなり、耐久性が高まる。
アスファルト混合物に1%相当を加えるだけで耐久性は約5倍向上するという。
発売は2020年12月で、高速道路の駐車場やガソリンスタンド、駅前バス停など大型車の荷重のかかる路面への使用を想定。国内外で約40万平方メートルの施工実績がある。
原料に廃棄プラスチックのポリエチレンテレフタレート(PET)素材を用い、また舗装が壊れにくいためマイクロプラスチックの発生も抑えられるという環境への貢献も注目される。
EVを想定した施工の本格化は「これから」(花王)だが、車重がガソリン車の1.2〜1.5倍となるEVの普及で道路への影響は見逃せなくなるとみる。課題は3割ほど高まる導入費用だ。
舗装が長持ちすればトータルコストを減らせるほか、磐田市では市内で出た廃PETを改質剤に再生する取り組みも始めて環境面の意義を発信する。
(武田敏英)
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