【ニューヨーク時事】米鉄鋼大手USスチールは12日、オンライン形式で開いた臨時株主総会で、日本製鉄による買収案が承認されたと発表した。投票の賛成率は98%を超え、粗鋼生産規模が世界第3位の巨大鉄鋼メーカー誕生へ一歩前進した。ただ全米鉄鋼労組(USW)が強硬に反発。今秋の米大統領選を巡る思惑も絡み、先行きに不透明感が漂っている。

日鉄は昨年12月、USスチールの全株式を取得し、約2兆円で買収する計画を公表した。1株当たりの買い取り価格は発表時の株価に約40%上乗せした水準で、大株主は「魅力的な提案」と評価していた。

USスチールのブリット社長兼最高経営責任者(CEO)は総会後に発表した声明で、「(統合は)USスチールと米鉄鋼産業の競争力をより高める」と意義を強調した。日鉄の森高弘副会長も声明で「買収完了に向けた大きな一歩が踏み出された」と歓迎した。

買収が実現すれば、両社の粗鋼生産規模は年間約5900万トンに上り、サプライチェーン(供給網)強化につながりそうだ。日鉄は今年9月までの手続き完了を見込んでいる。

総会で買収が認められたものの、多くの難路が待ち受ける。日鉄が雇用維持などを明言したのに対し、USWは「空約束だ」と批判。大統領選で労組票獲得を狙うバイデン大統領、トランプ前大統領がともに買収に異を唱えるなど、政治問題に発展している。

買収について米独占禁止当局や、安全保障への影響を検証する対米外国投資委員会(CFIUS)などが調査を始めた。政治動向が承認審査に影響を及ぼせば、統合が暗礁に乗り上げる可能性もある。

日本製鉄の看板

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