しょうゆや日本酒など伝統的な発酵食品に使われるこうじ。その原料となる「種こうじ」を製造する「石黒種麹店」が、宿場町の雰囲気を残す富山県南砺市にある。種こうじを作る店は全国でも珍しく、県によると北陸では唯一。同店が販売する塩こうじやみそは、プロの料理人や全国のファンに愛用されている。(共同通信=堤悠平)
江戸時代後期にこうじ作りを始め、明治時代の1895年に種こうじ作りも始めた。現在は4代目の石黒八郎さん(73)が当主を務めている。
明治に稲から採取した種こうじの原菌は店で代々継承してきたが、詳しい培養方法は当主にのみ受け継がれてきた。食品作りに使う生こうじは、種こうじと蒸したコメを混ぜ、「こうじぶた」と呼ばれる木製の道具に敷き詰め、湿度が100%近い部屋で2日間かけて発酵させる。ふたには「天保」や「安政」といった江戸時代の元号が墨書きされている。
平らに敷き詰め、こうじ菌が好む空気に触れる面積をなるべく増やすことで、含まれる酵素の量は市販品の約3倍にもなるという。かき混ぜたり冷やしたりするのは全て手作業だ。
種こうじは富山県内外の約60のこうじ店に卸すほか、石黒種麹店が生こうじを材料に作った塩こうじやみそ、甘酒は口コミで知った全国の人々が買い求めに来るという。
今年表面化した、小林製薬の「紅こうじ」サプリメントを巡る健康被害問題について、石黒さんは「われわれのこうじと、紅こうじは(使用する)菌の分類が違う」と強調。風評被害はないと話す。
石黒さんは現在、こうじ作りのノウハウを息子に継承中だ。「先祖が作ったものを忠実に守ることが私のできること。それがなにより難しい」と語り、伝統を未来につなぐ決意をのぞかせた。
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