天皇陛下は、皇后さまと長女愛子さまと一緒にパリ・パラリンピックを連日テレビで観戦し、選手たちを応援された。
皇太子時代から障害者スポーツに関心を寄せ、自身で体験することによって選手の置かれた状況や努力を理解しようとしてきた。
パラ大会での活躍に「これまで培ってきた力を尽くし、懸命に競技に臨む姿に感銘を受けている」(側近)という。(共同通信=大湊理沙)
▽手を握り
「1球いかがですか」。即位前の2018年8月、三重県の子ども心身発達医療センターでボッチャを見学していた際、選手にボールを渡された。投げた陛下は「難しいですね」と笑顔を浮かべた。
審判を務めた理学療法士の古川敦さん(55)は「一人一人の手を取り『素晴らしかった』『上手でしたね』と声をかけてくれた」と振り返る。
後で気付いたが、選手の手のひらは、緊張から汗でべたべただった。「この手を握ってくれたのか」と驚いたという。
陛下は2019年の誕生日記者会見で、このときのことを「自然な形でパラリンピックの競技を体験でき、本当に自分にとっても良かった」と言及した。
古川さんは「たった1球の体験を、その後も大切に思ってもらえることがうれしい」と話す。
▽伴走
皇室と障害者スポーツのゆかりは深い。
1964年の東京パラリンピックで皇太子時代の上皇さまが名誉総裁に就任し、ご夫妻で連日のように観戦に訪れた。上皇さまの希望もあり、翌65年から全国身体障害者スポーツ大会が始まる。
陛下は思いを継ぎ、1990年以降、大会に足を運んで見守ってきた。
趣味のジョギングをきっかけに、東京・赤坂御用地でパラリンピック女子マラソンの道下美里さんに伴走したこともある。
「どのように目の見えない方をリードしたらいいのか」(2019年会見)と心配し、事前に本や動画で研究したという。
「少し緊張しましたが、楽しくとてもいい経験をさせてもらった」と陛下は語っている。
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