◆既に服役終えた共犯者の「刑事確定記録」
東京都小平市で2001年、イラン国籍の3人が現金輸送車から1億円を奪ったとされる事件で、国際手配中に来日し、強盗傷害容疑で逮捕された同国籍の男(51)が、今月26日に不起訴(嫌疑不十分)となった。地検立川支部への取材で、共犯の元受刑者の刑事確定記録が廃棄されていたことが判明。事件に関係する検察側証拠が失われ、処分の判断に影響したとみられることが、関係者への取材で分かった。(鈴鹿雄大)刑事確定記録 判決文(裁判書)を含む刑事裁判で使われた供述調書や実況見分調書、捜査報告書などの記録を指す。判決確定後、一審裁判所に対応する地検で保管される。保管期間は刑の重さなどに応じて異なる。有罪が確定した刑事裁判の場合、判決文以外の記録は、50年(死刑か無期懲役)~3年(罰金刑)などと定められている。検察官が必要と認める場合、期間が延長される。期間を満了した後も、調査研究の重要な参考資料にあたる場合、法務大臣が刑事参考記録として指定して保存する制度もある。
◆「保管期間を満了」…いつ廃棄したのかは明らかにせず
地検立川支部によると、元受刑者の刑事確定記録は保管期間を満了したため廃棄した。廃棄の時期を明らかにしていない。 関係者によると、廃棄によって証拠などの記録が失われた一方、事件発生から23年たち、元受刑者や検察側が過去に聴取した他の周辺者も帰国するなどしており、再捜査して証拠を得ることは困難となった。こうした状況が、不起訴の判断につながった可能性があるという。東京地検立川支部が入る建物=検察庁ホームページ(https://www.kensatsu.go.jp/kakuchou/tokyo/page1000027.html)より
地検立川支部は東京新聞の取材に「個別の事件についてはコメントできないが、捜査を尽くし不起訴と判断した」とした。 事件は2001年10月3日、小平市のJA支店前で発生。現金を輸送車に積み込もうとした警備員2人が男らに拳銃で脅され、1人が右足を撃たれて重傷を負い、約1億円が入ったバッグを奪われた。 2002年に強盗傷害容疑で3人のうち1人が逮捕され、有罪判決が確定して服役し、既に刑期を終え帰国。残る2人が国際手配となり、今年7月に入国しようとした1人を警視庁が逮捕、入管難民法違反などの罪で起訴された。同庁は残る1人の行方を追っている。 ◇◆「他の同様の事件でも廃棄されている可能性」
大阪大大学院の水谷規男教授(刑事法)の話 共犯の容疑者が逃亡中の事件で、検察が刑事確定記録を廃棄したことは問題。他の同様の事件でも廃棄されている可能性がある。廃棄により容疑者が不起訴処分となったのなら、公開の法廷で事件を明らかにする機会を失ったことになり、公益を損なったと言える。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。