職人の手によって一つ一つ手彫りされる「和菓子木型」を3Dデータ化し、レプリカを芸術品として販売するサービスを千葉市と三重県四日市市に拠点を置く会社がこの夏、開始した。ハンチャンコーポレート代表の半林義之さん(59)は「データとして残すことで、伝統文化の保護や継承にも役立てたい」と力を込める。(共同通信=白鳥礼珠)

 江戸時代に誕生したとされる和菓子木型は主に、伝統的な干菓子の落雁を作る際に使用される。砂糖や水あめなどの材料を詰めて成形し、魚のタイや季節の草花をかたどったものがある。1999年には「菓子木型」として香川県伝統的工芸品に指定されているが、作り手は全国に数人しかいない。

 半林さんは2022年10月に製造業を辞め起業。日本の伝統文化に対する世界の評価が高いことに着目し、これからは文化の継承を考えるべきだと決意。自身が過去に自動車部品のデータ化に携わっていたことから、和菓子木型のデータ化にこぎ着けた。

 同サービスでは、和菓子木型を無償で3Dデータ化し、半林さんがレプリカを販売。木型を提供した和菓子屋にはデータとレプリカの売り上げの一部が送られる仕組みになっている。

 四日市市の和菓子屋「夢菓子工房ことよ」の岡本伸治社長(50)は「伝統がなくなる前に手を打ちたい」と木型を提供。岡本社長によると、和菓子屋の閉業に伴って木型を廃棄するケースも多いという。「海外のアンティークショップで見かけたこともあり、芸術品としても価値があるはず」と話す。

 一度データ化してしまえば、火災で木型が燃えてしまっても復元可能。食器やキーホルダーなど新たな用途として再活用することもできる。半林さんは「木型の価値を再認識してもらい、日本の素晴らしい伝統を残す一助になりたい」と期待する。

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