「日本の家郷」などの文芸評論や「悪女の美食術」などのエッセーで知られ、保守派の論客としても活躍した文芸評論家で慶応大名誉教授の福田和也(ふくだ・かずや)さんが20日、急性呼吸不全のため死去した。63歳。東京都出身。葬儀は関係者のみで行う。喪主は妻圭子(けいこ)さん。  ナチス・ドイツに協力したフランスの文学者を論じた「奇妙な廃墟(はいきょ)」でデビュー。文芸評論家の江藤淳さんに才能を見いだされ、35歳で日本文芸家協会の理事に選ばれるなど若くして文壇と論壇双方の中心で活躍した。  「日本の家郷」で三島由紀夫賞、「甘美な人生」で平林たい子文学賞(評論部門)を受賞。「ポスト団塊の世代」の自覚から出発し、「日本」や「近代」の在りようを考察した。昭和天皇や乃木希典らの重厚な評伝から、読書や食、恋愛を巡るウイットに富んだエッセーまで幅広く執筆した。  慶応大で教壇に立つ傍ら、作家柳美里さんや俳優・作家のリリー・フランキーさんらと文芸誌「en-taxi」の創刊や編集に関わり、テレビやラジオのコメンテーターも務めた。人気作家の小説を100点満点で採点した「作家の値うち」では、一部のベテラン作家の作品を酷評し、物議を醸した。  「地ひらく」で山本七平賞、「悪女の美食術」で講談社エッセイ賞を受賞。他の著書に「日本人の目玉」「人間の器量」「保守とは横丁の蕎麦(そば)屋を守ることである」など。


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