もうすぐ10月ですが、まだ日なたに出ると汗ばんでしまいます。私たちの常識では光が当たると温まりますが、千葉大と大阪大、京都大の研究グループが作った物質は、光を当てると温度が下がるというのです。米学術誌にその実験成果を発表しました。

ハロゲン化金属ペロブスカイトに光を当てると緑色(右)に光る=山田泰裕教授提供

 この物質はハロゲン化金属ペロブスカイトといいます。ペロブスカイトの仲間は光を吸収したり出したりしやすい性質をもち、太陽電池やディスプレーの材料として注目されています。  物質が温まるということは、物質をつくる原子の振動が激しくなるということです。通常の物質に光を当てると、光のエネルギーが熱に変わって原子の振動が激しくなり、温度が上がります。  ハロゲン化金属ペロブスカイトには、光を吸収し再び放出する性質があります。光を受けると、そのエネルギーはいったん電子に受け渡され、その電子がふたたびエネルギーを放出して、光となって出て行くのです。  原子の振動が電子に伝わりやすいのもこの物質の特徴です。そのため、光のエネルギーを受けた電子に周囲の原子から振動が伝わって、さらにエネルギーの高い状態になるのです。  こうして高められた電子のエネルギーが光となって放出されます。つまり放出される光が熱エネルギーを持ち去るのです。だから、光を当てるほど冷えていくというわけです。  実験では大きさ約10マイクロメートル(1マイクロは千分の1ミリ)の試験片に8分間光を当てたところ温度が室温から9度下がりました。  ハロゲン化金属ペロブスカイトに光を当てると温度が下がるだろうと考えられていましたが、温度を正確に測るのが難しく実証できませんでした。グループでは物質から出るいろいろな色の光を幅広く分析することで、温度の変化を正確に割り出す方法を開発して実証しました。  千葉大の山田泰裕教授は「精密機械の冷却や、人工衛星のように真空中に浮かんで熱を逃す場所がないものの冷却にも使える可能性がある」と期待します。今回の物質では10度下げるのが限界だといいますが、冷却に関係する電子を増やしたり、電子の周囲の物質を工夫したりすれば冷却効率が上がる可能性もあるといいます。 (永井理)


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