小林製薬は今回の問題についての会社側の対応を検証するため、ことし4月から外部の弁護士3人で構成する「事実検証委員会」で調査を進め、結果をまとめた報告書を23日、公表しました。

それによりますと、紅麹原料を製造していた工場の関係者への聞き取り調査で、「紅麹を培養するタンクの内側に青カビが付着していたと品質管理の担当者に伝えたところ、青カビはある程度混じることがあると告げられた」という証言があったということです。

また、工場内の乾燥機が壊れ、紅麹原料が一定期間乾燥されないまま放置されていたという証言もあったということで、報告書では「今回の問題の原因かは不明であるものの、製造ラインの品質管理は現場の担当者にほぼ一任する状況で人手不足が常態化していた」と指摘しています。

また、ことし1月中旬から2月上旬にかけて健康被害が疑われる事例が相次いで報告されたものの、問題の公表までに2か月以上かかったことについては、「消費者の安全を最優先に考えることができていなかった。遅くとも2月上旬以降、被害の公表や製品回収に力点を置く姿勢が強く求められた」などと指摘しています。

これについて小林製薬は「健康食品の安全性に対する意識が不十分であり、消費者への注意喚起や製品回収の判断が遅れてしまった。指摘を重く受け止め信頼回復と再建に努める」としています。

小林製薬の取締役会 “社内取締役3人の責任は重い”

小林製薬は、外部の有識者による「事実検証委員会」の調査結果をもとに、取締役会としての「総括」を23日に公表しました。

この中では、健康被害が疑われる事例が報告されてからも、適切な経営判断ができていなかったことに加え、会社から取締役会や行政などへの報告がなかったことも重なり、消費者への注意喚起や製品回収の判断が遅れたとしています。

そのうえで、公表時期がことし3月となったことについては、「適切ではなかったと言わざるを得ない」としたうえで、業務執行を行う社内取締役3人の経営責任は重いと指摘しています。

このうち、小林一雅 会長については、今回の対応に直接関与していないものの、行政への報告の遅れなどもあり経営責任は重いとしたほか、小林章浩 社長については危機対応へのリーダーシップを発揮することができず、結果として公表の遅れなどを招いたことの経営責任は重大だとしています。

山根聡 専務についても、率先して危機対応に当たるべき立場にあり、経営責任は重いとする一方、会社をまとめるために必要な資質を備えていることも考慮し、社長に選定したとしています。

取締役会は今回の調査結果を踏まえ、会社の再建とコーポレートガバナンス=企業統治の抜本的な改革を行うための経営体制について来年3月の株主総会で諮る考えを明らかにしています。

武見厚労相「ガバナンスの立て直しを」

武見厚生労働大臣は記者団に対し「人事についてはコメントする立場にない」としたうえで、「報告書では、健康食品の安全性に関する意識の低さや、ガバナンスについてのさまざまな指摘がされている。小林製薬は真摯(しんし)に受け止め、再発防止策を早急に策定し、ガバナンスの立て直しに取り組んでもらいたい」と述べました。

その上で、小林製薬から報告されている死亡事例と製品の摂取との因果関係の調査について「自治体と協力をしながら、来月中旬ごろまでには大部分を終わらせられるようなスピード感を持って取り組んでいきたい」と述べました。

さらに再発防止に向けて、食品衛生法の施行規則を改正し、機能性表示食品を製造・販売する事業者に対し、健康被害の情報について、因果関係が明確でない段階でも、速やかに都道府県知事などに報告するようことし9月1日から義務づける方針を示しました。

会社の問題把握から公表までの経緯

小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントの問題について、会社が問題を把握してから公表するまでの経過をまとめました。

小林製薬によりますと、医師から健康被害が疑われる最初の症例の報告があったのは、ことし1月15日でした。

その後も報告が相次いだことから、社内で検証を進めることになり、2月6日には小林社長にも報告されました。

しかし、会社が製品の自主回収を決め問題を公表して使用中止を呼びかけたのは、最初の報告から2か月以上がたった3月22日でした。

製品から想定しない成分が検出されたのは3月15日で、小林社長はその時点まで製品回収や消費者への注意喚起などの対策を率先して指示することはなかったということです。

外部の有識者委員会がまとめた報告書では、この対応について「遅くとも2月上旬以降には全社を挙げて早急に対応すべきだった」と指摘しています。

製品から検出された想定しない成分については、3月29日に青カビからつくられる「プベルル酸」という物質の可能性があるという調査結果が発表されました。

その後、ことし5月に厚生労働省と国の研究所が「工場内の青カビが培養段階で混入して、『プベルル酸』などの化合物がつくられたと推定される」と公表していて、現在も原因物質を特定するための調査が続いています。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。