伊藤信太郎環境相との懇談の際に水俣病被害者らの発言が遮られた問題で、環境省が改めて設けた懇談が8日、熊本県水俣市で始まった。伊藤氏は団体側から見直しを求められていた患者認定制度について「(現行の認定業務は)総合的に検討してもらっていると考えている」と現状維持を強調。団体側から「ゼロ回答だ」と反発の声が上がった。同省は被害地域の住民健康調査を2026年度に開始する方針を明らかにした。

伊藤環境相(右から2人目)と田中実子さん㊧の面会の様子(8日午前、熊本県水俣市)=水俣病互助会提供・共同

懇談は同市の交流施設「もやい館」で6団体合同で開かれた。伊藤氏は発言遮断に関し「不適切な運営をし、大変申し訳ありません」と改めて謝罪。今後も被害者側と政務三役らとの意見交換の場を設けるとした。

環境省はMRIと脳磁計を用いた健康調査を「水俣病公式確認から70年となる26年度に開始できるようにする」と説明。被害者側から、この手法では年間500人が対象と想定され、広範囲な被害の検査手法として「妥当なのか」と疑問が呈された。調査の対象範囲や終了見通しに関する質問もされたが、環境省側は明言しなかった。

伊藤氏は1956年の水俣病公式確認のきっかけとなった「1号患者」の田中実子さん(71)と会い、胎児性患者らの集会施設も訪問。共同作業所で面会した胎児性患者の坂本しのぶさん(67)は「いつまで元気でいられるか分からない。これからのことを思えば不安」と訴え、伊藤氏は「省としてもっと何ができるか、皆さんと共同で進めていきたい」と答えた。

今年5月1日の懇談には8団体が参加。持ち時間3分を超えた複数の発言者のマイクを環境省側が切った。伊藤氏は5月8日、現地で謝罪。省内にタスクフォースを立ち上げ再懇談を設定した。

再懇談は、7月8、10、11日の計3日間で、熊本、鹿児島両県の計8団体と予定。発言時間に制限を設けないとしている。新潟水俣病の関係団体との懇談も、17、18日に新潟市内で開かれる。

〔共同〕

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