政府がマイナ保険証の利用促進キャンペーンを始めた5月、利用率が7.73%に上昇した。 厚生労働省医療介護連携政策課の担当者は、利用率の伸びについて「利用促進事業が奏功していることに加え、確認されていた紐付け誤りへの対応が完了し、安心して使っていただける環境が整ったからだ」と説明している。 ただ、利用率は4月(6.56%)から1.17ポイント伸びただけで、依然として低水準にとどまっている。

厚労省は、5~7月利用促進の集中取り組み月間として、利用者が増えた病院や薬局に最大20万円の支援金を出し、てこ入れを図っている。

◆薬局の利用増が全体押し上げ

厚労省によると、5月のマイナ保険証の利用件数は1425万件。4月に比べて214万件の増加だった。増加分のうち、7割近く(142万件)を薬局が占め、全体の数字を大きく押し上げていた。 厚労省は、病院や薬局の窓口で利用を勧める声かけを推奨している。声かけを徹底するため「台本」まで用意している。 利用者が増えた一方で、窓口の声かけに患者からは「強制だ」と反発も広がっている。 従来なら処方箋だけで薬を出す薬局が多かったためか、薬局でマイナ保険証の利用を求められることに抵抗を感じる人が多いようだ。「マイナ保険証がないと薬をもらえない」と受け止め、不本意ながらマイナ保険証に登録した人もいた。

◆反発目立つ薬局での声かけ

東京新聞に寄せられた情報でも、ほとんどが以下のような薬局への声かけに対する苦情や不満だった。

クリニック受け付けのカードリーダー

「今年度になって薬局で、『マイナンバーは持っていますか?』と上から目線で聞いてくるようになりました。気の弱い人なら気後れしそうな勢いです」 「私も5月半ば、近く薬局で半ばマイナ保険証がないと薬を出してもらえないと取れるような言い方をされ、すごく不快な思いをしました」 「『マイナンバーカードをここ(読み取り機)に置いてください』と強制のような言い方をされ『もうそうしないといけないんだなあ』と思いました」 開業医らでつくる「全国保険医団体連合会」の本並(もとなみ)省吾事務局次長は「薬局での利用増は強引な勧誘のせいだ。薬局では処方箋があれば、基本的に薬はもらえる」と指摘する。(マイナ保険証取材班)

政府のマイナ保険証の普及策 厚労省は2023年度補正予算に217億円を計上。2024年1月以降、利用者が増えた病院や薬局に見返りとして支援金を支給する。集中取り組み月間の5~7月は、人数に応じて病院には最大20万円、薬局や診療所には最大10万円を出す。窓口での声かけやチラシの配布、ポスター掲示が条件。政府は12月2日で現行の保険証の新規発行を停止する方針だが、マイナ保険証の利用は低迷している。

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