中央教育審議会の特別部会は31日、大学の再編や統合への支援などに関する中間まとめの素案を公表した。財務状況が厳しい大学が統合し、学生数が定員を超過しても、補助金減額の罰則を軽くするといった特例措置を検討する。

素案では「少子化が急速に進行する中で、今後は定員の未充足や募集停止、経営破綻となる大学がさらに生じることも想定される」とし、高等教育機関の連携や再編、統合のあり方について「より深化した取り組みが求められる」と強調した。

現在は学生数が定員を超過すると国からの補助金が減る。関係者によると、文部科学省は経営破綻した大学の学生を引き受けて定員超過になった場合、補助金を減らさない方向で調整を進めている。

規模の縮小や撤退への支援の方向性として、素案は学生募集を停止した学部の継続的な教育研究活動を支える仕組みや、学校法人が解散する場合の学生を保護する枠組みづくりを挙げた。

18歳人口の減少を受け、文科省は2022年に63万人だった大学入学者が40年以降は49万〜51万人に減ると試算する。総入学定員が現状のままなら8割しか埋まらなくなり、大学の淘汰は避けられなくなる。

高等教育全体を適正な規模にするため、特別部会は海外からの留学生や社会人の受け入れの促進策を考える。従来の「18歳」「国内」「対面」にこだわらず、多様な学生を受け入れるため、学生の概念を見直すことが必要だとした。

留学生の定員管理の方策や選抜方法、社会人を多数受け入れる場合の教育環境の質の担保などが議論の課題となる。

人口減少が都市部より進む地方では、地域で活躍する人材を育成するための高等教育の機会確保が重要になる。素案では地域の実態を踏まえた連携・再編の計画を策定するために、複数の大学や自治体、産業界などの関係者が話し合う場の構築が必要だとした。

特別部会では今後、授業料を含めた教育費の負担のあり方についても議論する。

国立大の授業料を巡っては、これまでの特別部会の会合で、委員を務める伊藤公平・慶応義塾長が現状の約3倍となる年150万円へ引き上げる必要性を強調した。自民党の教育・人材力強化調査会(柴山昌彦会長)は5月、国際競争力を強化するために適正な授業料の設定と、奨学金の拡充など負担軽減をセットで検討すべきだとの提言をまとめた。

特別部会は夏ごろに中間まとめを出す。中教審は24年度中に答申を出す方針で、文科省が政策への反映を目指す。

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