京都府内の大学生に府内の中小企業の魅力を知ってもらおうと、来春卒業見込みの学生らを対象にした合同会社説明会「京都ジョブ博」が京都産業会館(下京区)で開かれた。29日には、2026年以降に卒業する学生らが対象の「就活準備フェア」も開く。

 府や京都ジョブパーク、府中小企業人材確保推進機構などの主催。人手不足を背景に大手企業の採用が早まっていることを踏まえ、昨年より約1カ月前倒しして5月8、15、18日に開いた。3日間で前年比50社増の150社が出展し、過去最多の約1200人の来場があった。

 出展企業は「誰もが働きやすい職場作り」に取り組んでいると府が評価した企業。留学生や大学2~3年生も参加できる。

 府雇用推進課によると、就職後も府内にとどまる比率は21年度で18・6%。22年度は17・8%に下がった。オンライン就活の普及も背景にあるという。

 担当者は「世界に通用する唯一無二の技術を持つ京都企業はたくさんある。中小企業では若いうちから重要な仕事を任せられる機会も多く、配属先のミスマッチも起きにくい」と話す。(日比野容子)

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「配属ガチャ」にどう向き合うか

 入社後の配属先が希望と異なる状況を、カプセル玩具の「ガチャガチャ」になぞらえ、「配属ガチャ」と呼ぶ。厚生労働省によると、2020年3月の新卒者の入社3年以内の離職率は大卒で32・3%、高卒は37・0%。早期離職の原因の一つ、配属ガチャにどう向き合うか。15日の「京都ジョブ博」で学生と企業の採用担当者に聞いた。

 「ガチャに外れたら、僕なら辞めますね」。ビール会社が第1志望という同志社大商学部2年の男性(20)は言い切った。

 今春、グループ発表が主体と聞いて、英語の授業を履修登録した。出席すると、個人発表で授業を進めるという。手続きは面倒だったが、すぐに登録を抹消し、別の授業を選択し直した。「就職でも同じこと」と言う。

 「仕事は、やりがいとリターンの掛け算だと思うんです。どちらかがゼロだと、掛けてもゼロにしかならない。思い描いた仕事ができないなら、辞めるのは当然です」

 一方、文学部4年の女性(21)は希望と異なる配属先になっても「『ガチャに外れた』と思うのではなく、貴重な経験の一つとしてとらえたい」と話す。そのためにも、多くの部署のことを学生が知る機会を設けてほしいと企業側に求める。

 「どんな人が働いていて、どんな仕事があるのか事前に知ることで、安心して配属先の決定を待つことができる」

 企業側も取り組みを進める。アスファルトプラントで国内トップを誇る日工の子会社・日工電子工業(京都府長岡京市)は、4つある職種のうち、どれを希望するか、採用段階で聞き取る。希望以外の職種には配属しないという。

 桧山慎一・管理課長は「福利厚生を整え、人生設計が立てやすいような人事を心掛けている」と語る。

 一方、業務スーパーやコメダ珈琲店などのフランチャイズ店を運営するサンフェステ(京都府亀岡市)は昨年、入社後の1カ月間は飲食、小売り、酒造の全3部門を順番に回り、本人の希望と現場の適性判断を踏まえて配属先を決める新制度を導入した。いわば「入社後のインターンシップ」で、配属ガチャによる離職を防ぐ試みだ。

 山根幸治・執行役員経営企画室長は「様々な仕事を経験してはじめて、企業人として成長できる。企業側がもっと自信を持って学生に教えていく必要があるのでは」と指摘する。(日比野容子)

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