国のエネルギー政策の中長期的な指針「エネルギー基本計画」の見直しに向けた議論が、15日始まった。岸田政権が掲げる「原発の最大限の活用」の具体化を話し合うとみられている。この日、それを警戒する地方議員たちが政府に、原発の再稼働に必要な地元同意の範囲を「広げるべきだ」と求めた。(荒井六貴)

◆エネルギー基本計画見直し議論開始の日

資源エネルギー庁の担当者(左)に要望書を手渡す東京電力柏崎刈羽原発30キロ圏内の自治体議員ら=東京・霞が関の経済産業省で

 東京・霞が関の経済産業省。基本計画の会議が始まる1時間半ほど前、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の30キロ圏内にある自治体の議員たちが、資源エネルギー庁の担当者に、再稼働への同意が必要な自治体の範囲を30キロ圏に拡大するよう求める要望書を手渡した。  地元同意について、基本計画には「立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」とある。同意を取る自治体の対象は明示されていない。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、新規制基準に適合して再稼働した原発では、電力会社は同意の範囲を立地自治体と県に限ってきている。同意が必要な自治体が増えると、再稼働のハードルが高くなるためだ。  原子力立地政策室の前田博貴室長は、新潟県長岡市の関貴志市議から基本計画が規定する自治体の範囲について問われ、「再稼働には広い理解を得ていくことが大事」などと明確には答えなかった。

◆前のめりな岸田政権が「逆に狭めるのではと心配」

 原発で深刻な事故が起きれば、影響は立地自治体にとどまらない。福島事故後、原発から30キロ圏内の自治体に住民の避難計画の策定が義務付けられた。だが、再稼働に同意するかどうかには関われない。自治体はこのジレンマを抱える。  関市議は取材に「基本計画で同意範囲を30キロ圏に広げる意味で明記してほしいが、逆に狭めるのではと心配している。電力会社にとってはハードルだが、それを越えてこそ理解されるということではないか」と指摘した。 

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