【ニューヨーク=竹内弘文】12日の米株式市場でダウ工業株30種平均が急落し、前日比475ドル(1.2%)安の3万7983ドルで引けた。取引時間中の下げ幅は一時581ドルまで広がった。中東情勢の緊迫を背景に投資家のリスク回避姿勢が強まり、株式を売る動きが広がった。原油先物は約6カ月ぶりの高値を付けた。
個別銘柄では米銀最大手JPモルガン・チェース株が6%安となり、ダウ平均採用銘柄のうち最も下落率が大きかった。朝方発表した2024年通期の純金利収入の見通しが市場予想より保守的と受け止められた。半導体大手インテルも5%安。中国が自国の通信網から外国製半導体の締め出しを進めているとの報道が重荷となった。
ダウ平均は前週末5日対比では920ドル下げ、週間下げ幅は23年3月以来、約1年1カ月ぶりの大きさを記録した。当時は米有力地銀のシリコンバレーバンク破綻で金融不安が高まっていた時期だ。24年3月末に4万ドルに迫ったダウ平均は4月に入って失速し、2週間で1800ドルあまり水準を切り下げた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルなど複数の米主要メディアは12日、イスラエルを標的にしたイランの攻撃が迫っていると伝えた。イスラエルとイスラム組織ハマスの休戦交渉の先行きが不透明な中、新たな衝突が起きれば緊張が中東地域全体に拡大する懸念が広がる。
米国株の予想変動率VIX指数は一時19を超え、23年10月末以来の水準まで上昇した。「恐怖指数」の異名を持つVIXは、金融市場の不安感を示すバロメーターの1つ。地政学リスクの高まりが投資家心理を冷やしている。
「中東地域で戦闘が激化する懸念が12日の各市場を動かした」。米金融調査会社MFRのマリア・ラミレス最高経営責任者(CEO)は総括する。
米原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物相場は12日、一時1バレル87.67ドルまで上昇。23年10月下旬以来の高値を付けた。中東地域で衝突が拡大すれば、原油供給に制約が生じる可能性がある。
リスクに身構える市場参加者は米国債や金などの安全資産に資金を振り向けている。米債券市場で10年債利回りは前日比0.11%低い4.48%まで低下(債券価格は上昇)する場面があった。前日までインフレ再燃への警戒感から利回りは上昇基調だったが、12日は安全資産の米国債にマネーを逃避させる動きが見られた。
主要通貨に対するドルの総合的な強さを表すドル指数は5カ月ぶりの高水準となった。ニューヨーク金先物相場は12日、初めて1トロイオンス2400ドルを突破した。
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