内戦が続いてきたシリアでは、反政府勢力が8日に首都ダマスカスを制圧し、独裁的なアサド政権が崩壊しました。
反政府勢力は、シリア各地で刑務所に投獄されていた市民を解放していて、首都ダマスカスの北にあるサイドナヤ刑務所の周辺には、行方がわからなくなった家族などを探すため多くの市民が集まっています。
サイドナヤ刑務所は弾圧を受けた数千人もの市民が投獄され殺害された場所とされていて、その地下には人々を拘束する隠し部屋があるとの情報が広がり、集まった人たちが床や壁を壊しながら捜索活動を続けています。
今のところ、隠し部屋は見つかっていないということです。
反政府勢力の指導者 アサド政権下での弾圧 責任追及へ
一方、反政府勢力を主導した「シリア解放機構」のジャウラニ指導者は拷問などに関与した政権幹部らの名前を近く公表するとしたほか、秘密の拘束場所を明らかにすれば懸賞金を支払うと発表するなど、アサド政権下での弾圧の責任を追及する考えを示しました。
またジャウラニ指導者は、反政府勢力がこれまで実効支配してきた北西部イドリブ県の統治機構のリーダーに、暫定政権の組閣を進めるよう求めたとも報じられていて、国連などからテロ組織に指定されている組織の指導者がアサド政権の責任追及や政権移譲の動きを進めることに懸念も出ています。
人権団体や国連 “刑務所で非人道的な行為”
国際的な人権団体や国連は、アサド政権下のシリアの刑務所では非人道的な行為が繰り返されてきたと指摘しています。
国際的な人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、首都ダマスカスの北にあるサイドナヤ刑務所の関係者などの情報に基づいて、この刑務所では内戦が始まった2011年から4年余りの間に、通常の法的な手続きを行わず絞首刑によって5000人から1万3000人が殺害されたと推計し「こうしたやり方は政府の最高レベルで承認されたものだ」と指摘しています。
さらに拷問も繰り返し行われたほか、食料や水、医療が提供されず非人道的な状況だったとしています。
また、今月公表された国連の報告書でも、刑務所で性的暴力も含めて身体的・精神的に不当な扱いを受けたと収容されていた人たちが証言したとされていて、国連は「シリア政府は意図的に情報を隠し続けている」と指摘しています。
イスラエル軍のラジオ局 “アサド政権保有の戦闘機など空爆”
イスラエル軍のラジオ局は9日、アサド政権が保有していた戦闘機やミサイルなど250以上の標的をイスラエル軍が空爆したと伝えました。
こうした戦略的な兵器について、イスラエルは反政府勢力の手に渡らないようにするため破壊する方針で、ネタニヤフ首相も9日「シリアで発生した新たな状況について、イスラエルの安全保障のために必要なあらゆる行動をとる」と述べています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。