ドイツ連立政権の崩壊で総選挙の早期実施を迫られるショルツ首相(8日、ブダペストでの記者会見)=ロイター

ドイツでショルツ政権の与党、ドイツ社会民主党(SPD)など3党による連立政権が崩壊し、連邦議会(下院)選挙が前倒しされる見通しとなった。ドイツは欧州の政治と経済を主導する大国だ。内政の混乱を避け、安定の維持に尽くしてほしい。

ショルツ政権は2021年、中道左派のSPDと市場経済を重視する自由民主党(FDP)、環境政党「緑の党」の連立で発足した。3党は政治理念が異なり、政権運営には当初から困難を伴った。

今回は財政問題で経済対策を急ぐSPDと財政規律を重視するFDPが対立を深めた。ショルツ氏がFDPを率いてきたリントナー財務相を解任し、FDPの政権離脱を招いたのは残念だ。

ショルツ氏は下院で25年1月に信任投票を実施する考えだ。不信任となれば、大統領による議会解散を経て9月に予定する総選挙を3月にも前倒しするとしている。

ショルツ氏は野党から退陣圧力を受け、クリスマスの前に信任投票に踏み切る可能性も示唆した。内政の停滞を打開し重要な政策を前進させるためには、早期選挙で民意を問うことも選択肢だ。

特に景気の浮揚は待ったなしの課題だ。ドイツの24年の経済成長率は2年連続でマイナスになる可能性がある。国民は有効な対策を打ち出せない3党連立に不満を募らせ、世論調査で与党のSPDの支持率は10%台半ばに沈む。

欧州で広がる政治の不安定化をドイツも避けられず、憂慮せざるを得ない。欧州各国では内向きの極右政党が台頭し、ドイツの総選挙でも極右「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進が予想される。米国では「米国第一」のトランプ政権が誕生する。

ウクライナ侵略や中東危機、移民など深刻な国際問題の解決に必要なのは、日米欧や新興国の幅広い協力だ。ドイツはできるだけ早く内政の安定を取り戻し、国際協調を重んじる欧州連合(EU)のかじ取り役として責任ある役割を果たすべきだ。

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