ドイツでショルツ政権の与党、ドイツ社会民主党(SPD)など3党による連立政権が崩壊し、連邦議会(下院)選挙が前倒しされる見通しとなった。ドイツは欧州の政治と経済を主導する大国だ。内政の混乱を避け、安定の維持に尽くしてほしい。
ショルツ政権は2021年、中道左派のSPDと市場経済を重視する自由民主党(FDP)、環境政党「緑の党」の連立で発足した。3党は政治理念が異なり、政権運営には当初から困難を伴った。
今回は財政問題で経済対策を急ぐSPDと財政規律を重視するFDPが対立を深めた。ショルツ氏がFDPを率いてきたリントナー財務相を解任し、FDPの政権離脱を招いたのは残念だ。
ショルツ氏は下院で25年1月に信任投票を実施する考えだ。不信任となれば、大統領による議会解散を経て9月に予定する総選挙を3月にも前倒しするとしている。
ショルツ氏は野党から退陣圧力を受け、クリスマスの前に信任投票に踏み切る可能性も示唆した。内政の停滞を打開し重要な政策を前進させるためには、早期選挙で民意を問うことも選択肢だ。
特に景気の浮揚は待ったなしの課題だ。ドイツの24年の経済成長率は2年連続でマイナスになる可能性がある。国民は有効な対策を打ち出せない3党連立に不満を募らせ、世論調査で与党のSPDの支持率は10%台半ばに沈む。
欧州で広がる政治の不安定化をドイツも避けられず、憂慮せざるを得ない。欧州各国では内向きの極右政党が台頭し、ドイツの総選挙でも極右「ドイツのための選択肢(AfD)」の躍進が予想される。米国では「米国第一」のトランプ政権が誕生する。
ウクライナ侵略や中東危機、移民など深刻な国際問題の解決に必要なのは、日米欧や新興国の幅広い協力だ。ドイツはできるだけ早く内政の安定を取り戻し、国際協調を重んじる欧州連合(EU)のかじ取り役として責任ある役割を果たすべきだ。
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