【ニューヨーク=吉田圭織】米大統領選の激戦州ペンシルベニアで選挙手続きを巡る不正や問題が相次いでいる。選挙不正とみせかけたロシアの偽動画も拡散した。ペンシルベニアの投票結果は選挙戦の行方を左右するとされる。5日の投票日を前に混乱が広がっている。
数千件の虚偽の有権者登録
南部のランカスター郡とヨーク郡では10月下旬、数千件の不正な有権者登録の申請が発覚した。実在しない住所や虚偽の名前を使って登録しようとしたほか、第三者が本人と偽って登録しようとしたケースが相次いだ。
ヨーク郡では受け取った3000以上の有権者登録用紙のうち24%に問題があったと判断し、選挙登録を受け付けなかったという。残りの47%は承認され、29%は追加情報が必要として審査を続けている。ランカスター郡の地方検事局は「犯人の特定に向けた調査を続けている」と発表した。
投票用紙の未着や受付拒否も
訴訟も相次ぐ。北西部のエリー郡では郵便投票を申請した1万〜2万人もの有権者に投票用紙が届いていないことが分かった。同州の民主党は10月30日、「有権者登録をした人にとって大統領選への投票を難しくしており、投票権を侵害している可能性がある」として、選挙管理委員会に対して訴訟を起こした。
エリー郡は過去4回の大統領選で投票結果と当選者が合致するなど、選挙の行方を占う「激戦州の中の最激戦地」として知られる。
南部バックス郡では10月29日、郵便投票の申請のため役所に並んでいた複数の有権者が期限日の午後5時を過ぎたことを理由に申請を却下された。州の代表は午後5時までに並んでいれば時間を過ぎても申請ができると発表しており、トランプ氏の選挙陣営や共和党全国委員会(RNC)が提訴。州は申請期限を11月1日まで延長した。
トランプ氏は10月31日、自身の立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」のアカウントで「彼らがペンシルベニアで大規模な不正を起こそうとしているのを暴いた。いますぐ発表して訴追する必要がある」と投稿した。
ロシアが偽動画
偽動画も拡散している。バックス郡の選挙関係者を装った人物が「トランプは大嫌いだ!」と叫びながら、トランプ氏に投票した複数の郵便投票用紙を破く様子が映っていた。同郡の選挙管理委員会は声明で「これは偽動画だ」と明らかにした。「ビデオに映っている封筒などは、同郡の選挙管理委員会が配布している正規のものでない」と説明した。
その後、連邦捜査局(FBI)や米国家情報長官室(ODNI)、米国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティー専門機関(CISA)は10月下旬に共同声明を出し、この動画はロシアが作成したと発表した。「ロシアは選挙に対する信頼を損なわせ、米国を分断させるようなコンテンツを作成・公開すると予想している」と指摘した。
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