米西部シアトル郊外で鉄道に積まれた小型機「737MAX」の胴体部品=ロイター

【ヒューストン=花房良祐】航空機大手の米ボーイングと労働組合執行部は31日、4年間で38%の賃上げなどを柱とする新たな労働協約案で暫定合意した。11月4日に組合投票を実施する。組合員の過半数の賛成が得られれば、9月中旬から続く主力工場のストライキが終結することになる。

暫定合意した労働協約案では、組合員1人あたり一時金1万2000ドル(約182万円)を支給することが盛り込まれた。一時金は確定拠出型年金にも充当できる。一部の組合員が求めていた確定給付型年金の導入は見送られた。

労組執行部は当初40%賃上げなど高い要求を掲げ、会社と交渉していた。9月に結んだ最初の暫定合意案は賃上げ25%で一時金3000ドルだった。95%の組合員が反対し、西部ワシントン州などの工場で16年ぶりとなるストに突入した。10月には35%賃上げや一時金7000ドルを柱としたボーイングの提案が組合投票で再び否決された。

今回の暫定合意を受け入れた労組執行部は「自信を持って勝利を宣言する時だ。これ以上ストを続けるよう呼びかけるのは正しくない」とコメントし、会社案を受諾するよう組合員に訴えた。「交渉とストで得られるものは全て得た。将来の会社提案が悪化するリスクがある」とも指摘した。

ボーイングは小型機「737MAX」や大型機「777」などの生産が1カ月以上にわたり停止しており、財務状況が悪化している。ストにより、1カ月あたり10億ドル規模の資金が流出しているとの見方もある。新株発行で200億ドル以上の資金を調達するほか、従業員の1割を減らし、コスト節減するなど対応に追われている。

労使交渉の難航で労働省高官が仲介する事態になっていた。米大統領選の投票日が11月5日に迫るなか、それまでに全世界の注目を浴びる労働争議を解決したいバイデン政権の意向が働いた可能性もある。

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