23日、ロシア西部のカザンに集まったBRICS加盟国の首脳ら=ロイター

ブラジルやロシア、インド、中国、南アフリカなど有力新興国で構成するBRICSは22〜24日、ロシアで首脳会議を開催した。米欧に対抗して世界の分断を招くのではなく、新興・途上国と日米欧など主要国との融和に努め、責任ある役割を果たすべきだ。

BRICSは今年から加盟国が4カ国増え、今回の首脳会議で「パートナー国」制度の創設も決めた。ただ、組織の整備と具体的協力を探る過渡期にあり、実行力を伴う多国間組織になれるかは未知数だといわざるをえない。

BRICSは台頭するグローバルサウス(新興・途上国)を取り込み、参加国の間で協力を広げる枠組みを目指している。

だが、首脳会議ではそれぞれの国益を優先する発言が目立ち、結束力に欠ける。採択した共同宣言は、米欧による制裁を違法と批判する一方、自由や民主主義といった普遍的価値への言及に乏しい。

米国と対立するロシアや中国には、米欧主導だと批判する既存の国際秩序を都合良く変えるためにBRICSを利用する意図が見える。新興・途上国を自陣営に引き込み、主要国との分断を広げる企ては断じて許してはならない。

加盟国や13カ国が候補とされるパートナー国には、インドをはじめ日米欧と良好な関係にある国が多い。こうした国々はBRICSを主要国に対抗する組織にさせず、むしろ両者の間の橋渡しに努めてほしい。

今回の首脳会議がウクライナ侵略を続けるロシアで開かれたことは残念だ。30カ国以上が代表団を送り、このうち約20カ国は首脳級が参加したとみられる。国連のグテレス事務総長も出席した。

参加各国や国際機関は米欧の厳しい制裁を逃れるためにBRICSを利用しようとするロシアのプーチン大統領に加担せず、侵略の即時停止へ圧力を強めるべきだ。

BRICSが今後、国際社会で存在感を高めるためには、こうした重要な国際問題で建設的な役割を果たさなければならない。投資や貿易の拡大を話し合うだけでなく、気候変動やパレスチナなど各地の紛争、テロ対策など課題の解決へ議論を深めてほしい。

主要国も経済発展で発言力を増す新興・途上国と協力を一段と強化すべきだ。時代の変化に対応し、多くの国が参加可能なより包括的で公正な国際秩序にするための改革に取り組んでもらいたい。

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