イスラエルが殺害したと発表したハマスのシンワール氏(2022年、ガザ市)=ロイター

イスラエル軍が17日、パレスチナ自治区ガザで戦闘を続けるイスラム組織ハマスの最高指導者シンワール氏を殺害したと発表した。イスラエルは今回の一件をハマスとの間でガザの停戦と人質解放につなげる契機にすべきだ。

シンワール氏は昨年10月、ハマス戦闘員がガザから越境して多数のイスラエル市民を殺害・拉致した奇襲の首謀者とみなされている。人質解放と停戦に向けた交渉でも妥協を拒む強硬派とされた。

イスラエルは最大の標的として同氏の行方を追ってきた。今回の殺害を戦果と誇っているが、頭目を失ったハマス残党に攻撃を続けるより、ガザに捕らわれている約100人の人質帰還に集中する時ではないか。

イスラエルのネタニヤフ首相は軍事作戦を止めない考えを示している。1年以上にわたる戦闘でガザの死者は4万2千人を超えた。食料不足も深刻だ。国際社会はこれ以上の人道危機や一方的な破壊を許すべきでない。

バイデン米大統領は17日、ネタニヤフ氏と電話協議後、ガザでの戦闘を「今こそ終わらせ人質を解放する時だ」と語った。欧州主要国の首脳も停戦と人質解放を改めて訴えた。仲介役のカタール、エジプトとともに、停戦への努力を新たにしなければならない。

ハマスは相次いで幹部を失い、弱体化が進む。意思決定が混乱している恐れがあるが、人質を解放し、ガザ住民のために停戦を実現すべきだ。

戦闘が長引く間に、ガザから戦火が広がってしまった事態を憂う。イスラエルはレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラへの攻撃を強めた。ハマス、ヒズボラを支援してきたイランとの緊張も高まり、同国からミサイル攻撃を受け反撃を準備している。

イスラエルによる強硬路線への過信は報復の連鎖を招く。過剰攻撃との批判を呼び、国際社会の視線は厳しさを増す。中東の危機収束に向け、冷静にガザの戦闘の終結を探らなければならない。

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