大成建設がベトナムの首都ハノイに建設したオフィスビル「大成スクエアハノイ」。2024年9月に開業した

【ハノイ=新田祐司、橋本剛志】大成建設は19日、ベトナムの首都ハノイで開発から設計、施工まで一貫して手がけた大型オフィスビルの開業式典を開いた。日系企業がハノイで単独開発したオフィスは初めてになる。

「国際事業のフラッグシップと位置づけている。ベトナムのオフィスで新たなスタンダードになれたら」。相川善郎社長は開業した「大成スクエアハノイ」への期待をこう強調する。

高さ約90メートル、地下4階、地上20階建ての鉄筋コンクリート造りで延べ床面積は約4万5500平方メートルになる。投資額は90億円前後。完成後も大成建設が建物を保有して運営する。

あいさつする大成建設の相川善郎社長(19日、ハノイ市)

ハノイ中心部から西側に約8キロメートルの場所にあり、ノイバイ国際空港や近隣の工業団地にアクセスしやすい。2010年代に開発が進んだエリアで、近隣には韓国資本の「AONハノイランドマークタワー」やタイ発の商業施設「ビッグC」がある。

エレベーターはフジテック、トイレはTOTO、空調設備はパナソニックと日本企業の製品を導入した。警備も綜合警備保障(ALSOK)が手掛ける。現地法人タイセイ・デベロップメント・ハノイの中村正明社長は「日本に近い高品質なビルのショーケースにしたい」と語った。

床に工場生産したコンクリート部材を採用し、フロアの奥行きが約13メートルと大空間を確保した。外気の取り込み口にフィルターを設け、外気中のPM2.5(微小粒子状物質)を取り除く。米国発の国際的な環境性能認証プログラム「LEED」でシルバーを取得するなど、環境性能の高さもアピールする。

モノトーンと木目調を組み合わせた日本式の落ち着いたデザインにこだわった(19日、ハノイ市)

テナントは日系企業が4割、ベトナム企業が3割、残りが他国の企業と当初は見込んでいた。ただ、日系とベトナム系企業は投資意欲が弱く、想定よりも比率がやや低くなった。半導体投資などが旺盛な韓国や欧米、台湾勢が多く、入居率は想定通りになっているという。

今回開業したオフィスビルは1990年代に大成建設とベトナム国営企業の共同出資会社が土地の使用権を取得した案件になる。

大成建設は24年1月にベトナムで不動産開発を管轄する子会社を設立した。現地で不動産開発に強い人材採用を進める。「ベトナム事業は歴史が長く、海外の中でも現地化が最も進んでいる。今後の成長にも期待が持てる国」(相川社長)としている。

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