ロシアのプーチン大統領が政権への若手の登用を進めている。9月30日には安全保障に関する最高立案機関である安全保障会議のメンバーにジューミン大統領補佐官らを登用することを決めた。ウクライナ侵略が2年半を超え、長期化を視野に体制の立て直しを進める狙いとみられる。
プーチン氏は30日、ジューミン氏やマントゥロフ第1副首相ら4人を安全保障会議のメンバーに加える大統領令に署名した。現在の安保会議メンバーの平均年齢は約64歳。ジューミン氏は52歳、マントゥロフ氏は55歳で同会議のメンバーとしては若手となる。
ジューミン氏は連邦警護庁の出身で、1999年からプーチン氏の警護を務めた。2015年には国防次官に就任、その後は西部トゥーラ州知事を務めた。プーチン氏は大統領5期目に就任した24年5月にジューミン氏を大統領補佐官に抜てきした。補佐官として防衛分野などを担当しており、プーチン氏の後継候補の一人とみられている。
24年8月にウクライナ軍がロシア西部クルスク州に越境攻撃を開始し、同州の要衝スジャなどを制圧、13万人を超える住民が避難する事態となった。
現在も戦闘が続くウクライナの越境攻撃への対応について、プーチン氏は統括役にジューミン氏を任命した。ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州の制圧地域拡大に注力しており、プーチン氏はジューミン氏に指揮系統に課題があったロシア領内での掃討作戦に期待を示しているとみられる。
マントゥロフ氏も5月、副首相兼産業貿易相から第1副首相に昇格した。
プーチン体制を支える治安・軍要員(シロビキ)の政治家であるジューミン氏の登用は、ロシアの軍事化が一段と進んでいることを端的に示している。
ロシア政府は30日に25年の予算案を下院に提出した。ウクライナ侵略の長期化で兵員の人件費などが膨らみ、国防費は24年比約25%増の約13兆5000億ルーブル(約20兆8000億円)に達する。国防費は予算全体の3割を超える見通しだ。
戦時経済下でロシアでは内需が拡大し、インフレが再燃している。8月のインフレ率は9.1%で、ロシア中央銀行が目標とする4%を大きく上回った。
中銀は想定を上回るインフレが続いているとして、9月の金融政策決定会合で政策金利を1%引き上げて年19%とした。
だが足元ではウクライナ軍によるロシア西部クルスク州への越境攻撃などの影響で通貨ルーブルがドルに対して軟調に推移しており、輸入コストなどの上昇で国民の生活負担が一段と増す可能性がある。
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