岩手 アワビ漁「価格戻るか見通せず 不安残る」

アワビ漁が盛んな岩手県宮古市の漁協では、価格がどこまで回復するのか不安の声が聞かれました。

岩手県は全国有数のアワビの水揚げ量があり、香港が主要な輸出先となっていましたが、中国の輸入停止措置の影響で去年の10キロあたりの平均価格は8万8547円と、前の年に比べておよそ35%下がりました。

このうち、アワビ漁が盛んな宮古市の重茂漁協でも、前の年に比べて30%近く値下がりし、特に去年11月は半値近くにまで下落しました。

重茂漁協の後川弘之業務部長は「去年は予想していたよりはるかに値段が下がって漁業者にとって苦しかった。輸入の再開を待ちわびていたが、再開しても価格が戻るのか見通せず、不安は残る」と話していました。

また、宮古市重茂地区の漁業者は「アワビは冬の大事な収入源なので、去年は値段が大きく下がって苦しかった。良い値で売れてこそ活気が生まれるので、輸入の再開で早く値段が戻ってほしい」と話していました。

宮城県漁協「ひとつ前に進めるきっかけに」

宮城県漁業協同組合の寺沢春彦組合長は「具体的なところはまだ発表されていないが、ほっとしている。海水温の上昇でホタテやアワビなどが思ったほどの水揚げがない中、禁輸措置の影響で正しい評価を受けず、従来の半値以下になったり、取引ができなくなったりするなど、生産者は大変苦労していた。今までさんざんつらい思いをしながら頑張ってきたので、ひとつ前に進めるきっかけになるのかなとは思う」と述べました。

その上で「どの基準をクリアしないといけないのか今後決めていくなど、課題はまだあると思う。立ち止まることなく、本当の意味での再開を1日でも早くしてもらいたい。中国以外の国への輸出拡大も継続的に行い、日本の水産物をしっかり消費してもらえるよう取り組みを強化していかなければいけない」と話していました。

北海道 函館の水産加工会社 “引き続き 販路の多角化進める”

北海道函館市の水産加工会社からは再開に期待する一方で、引き続き中国以外の販路の多角化を進めていくといった声が聞かれました。

函館市の水産加工会社では、中国向けのホタテが売り上げ全体の4分の1を占めていましたが、中国による日本産水産物の輸入停止措置以降、影響を軽減しようと国内の販路拡大や新たな輸出先の開拓に力を入れてきました。

日中両国の合意について水産加工会社「きゅういち」の餌取達彦取締役は、「やっと大きく動き出すという期待はあるし、大きな転換点になると感じている」と話していました。

一方で、具体的な再開時期が決まっていないことを踏まえ「輸入停止措置も、再開に向けた発表も、突然で、中国とのビジネスでリスクはあると感じている。再開自体はよいことだが、再開されたからといってすぐには戻らないだろう」と話していました。

その上で「1年間、会社として販路の多角化に取り組んできた。中国のスタンスはもとに戻ったとしても、私たちは自分たちの判断で経営を進めていく」として、引き続き、中国以外の販路の多角化を進めていく考えを示しました。

大分 佐伯のハマチ養殖業者「中国への輸出量 調整したい」

大分県内の養殖業者からは期待とともに、慎重な声も聞かれました。

大分県佐伯市の養殖業者は去年8月、2万匹のハマチを輸出する手続きを進めていましたが、輸入停止を受けて出荷先を国内に切り替えるといった対応に追われました。

浪井大喜社長は「当時の輸入停止はびっくりしたが、新しい取引先が生まれ、結果としてこの1年はリスクについて勉強になった。輸入再開はありがたいが、中国に輸出する数量は調整したい。国内の需要は先細りするため海外市場は必須だが、リスク分散のためにもルールを決めて取り引きすることが重要だと思う」と話していました。

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