中国が東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出に反発し、日本産の水産物の輸入を停止して24日で1年がたった。日本の主要な輸出品であるホタテの2023年9月以降の輸入はゼロとなった。中国は代わりに水産物の調達をアジアや南米などから増やしている。
中国税関総署によると、日本産の禁輸に踏み切った直後の23年9月から24年7月までの水産物の輸入総額はドル建てで前年同期から1割減った。品目別にみると、ホタテを含む軟体動物が11%減、鮮魚が4%減となった。
中国は処理水放出前までは、日本からホタテなどの水産物を多く輸入していた。23年1〜8月の日本産水産物の輸入は2億9000万ドル(およそ420億円)に上っていた。同9月以降はほぼゼロとなった。
日本産に代わって中国が輸入を増やしたのが、アジアや南米などだ。23年9月から24年7月までのホタテ含む軟体動物の輸入は国別で、インドネシアが前年同期比で42%増えた。アルゼンチンは2.8倍、英国は2.5倍に急増した。
第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「米中貿易摩擦で米国からの輸入が減った際に南米からの輸入が増えた動きと似ている」と指摘する。
日本政府は上川陽子外相が中国の王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相に禁輸措置の撤廃を求めるなど状況の改善を探る。中国政府と協議を続けるものの、解決への道筋は見えない。中国外務省の毛寧副報道局長は23日の記者会見で、禁輸に関して「食品の安全と民衆の健康を守るのは正当かつ合理的で必要なものだ」と説明した。
日本の関連業者は中国に代わる輸出ルートの開拓を進めている。全国のホタテ生産量の9割ほどを占める北海道では米国や東南アジアへの輸出が増えた。函館税関によると、24年1〜6月にホタテ類の輸出は米国向けが前年同期の2倍の36億円、ベトナムが10倍ほどの31億円に拡大した。
日本全体でみると、中国の禁輸の影響で同じ期間にホタテ輸出は240億円と37%減った。中国に代わって、米国が最も多い輸出先となった。
北海道では水揚げが振るわない水産物からホタテの加工に切り替える動きも出てきた。マルデン(えりも町)は25年春に冷凍設備を稼働させ、東南アジアなどへの輸出につなげたい考えだ。傳法貴司社長は「原料を確保でき、商品の引き合いもあるホタテに取り組む」と話す。
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