ブラジルのアマゾンで森林火災が増加している=ロイター

【サンパウロ=水口二季】アマゾンの熱帯雨林などで発生した火災による煙がブラジルの広範囲に広がってきた。気候変動が誘発する大規模な火災の影響によって、健康被害の拡大を指摘する声も強まっている。

米海洋大気局(NOAA)の衛星画像などによると、森林火災による煙は少なくともブラジル国内の10州に広がった。アマゾンから3000キロ以上離れた南部のリオグランデ・ド・スル州のほか、パラグアイやペルーにも達した。

ブラジル国内は北部のアマゾンや世界最大級のパンタナール湿地帯で大規模な火災が多発している。ブラジル国立宇宙研究所(INPE)によると、1~8月にアマゾンで発生した森林火災は約5万9000件だった。23年の前年同期の2倍近いペースで推移している。

アマゾンは自然災害に加えて、牧草地の拡大などを目的とした野焼きが続けられている。現政権は違法伐採や森林火災の監視を強化しているが、気候変動による干ばつが火災の延焼を広げている。

国内の干ばつを監視する政府機関によると、国内の1000以上の都市が干ばつの影響を受けている。そのうちアマゾンの自治体が約6割を占める。8月には1日500~600件の火災が起きており、広範囲で大量の煙が発生している。

煙の被害を広げているのがブラジルの北部から南米大陸を流れる乾燥した風だ。気象情報データなどを扱うメトスウによると、高度1500メートルの上空で煙を乗せた風がブラジル国内を南下しているという。

大気汚染による健康被害への懸念も強まっている。

ブラジルの政府系研究機関であるフィオクルス財団は8月、煙による大気汚染によって呼吸器疾患が悪化する可能性があるなどとして、高性能なマスクの使用を推奨する声明を出した。

国連児童基金(ユニセフ)も同月、健康被害の拡大について注意するようアマゾン地域の自治体に対して警告を出している。

地元メディアによると、大気汚染が深刻なロンドニア州では市内の空港が視界不良のために閉鎖されるといった影響も出ている。

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