ウクライナ南部オデッサの港では穀物輸出を再開している=ロイター

ウクライナ南部オデッサでロシアの砲撃による輸出への打撃が続いている。ロシアが2023年7月にウクライナ産穀物の黒海輸送を巡る合意「穀物回廊」から離脱して丸1年が経過、インフラ施設などへの攻撃で輸送の回復に遅れが生じている。

7月27日にはオデッサで警報が発令される中、爆発音が鳴り響いた。ロシアによるウクライナ侵略後、インフラ施設などを狙ったミサイル攻撃が相次いでいる。

4月にはミサイルが鉄道施設を直撃し、その結果、オデッサ南部に位置するチョルノモルスク港は2週間にわたって貨車による物資の搬入と輸出ができなくなった。電力インフラの破壊も貨物の積み替え作業に悪影響を与えている。

オデッサは大規模な港を抱える黒海への玄関口だ。ロシアによる港湾地域への砲撃でオデッサの海上経済はロシアによる侵略直後から麻痺(まひ)する状況が続いていた。

状況に変化が出てきたのはロシアが黒海穀物合意から離脱した23年7月以降だ。ロシアは離脱した理由について自国産の食料輸出への障害を挙げ、国際銀行間通信協会(Swift)のシステムとの再接続など金融制裁の緩和を求めた。だが穀物合意は再開されず、ウクライナは軍による船舶の保護の下で同年に輸出を再開した。

物流会社ソウル・マリンの共同経営者のイワン・ニヤキイ氏は「船舶が攻撃で損傷を受けることもなく、船主の不安は払拭されつつある」と語る。

穀物については輸送網が稼働している。ただ金属製品の輸出の状況は厳しい。金属関連の工場はロシア軍の制圧地域にあるか砲撃で破壊されたところが多いためだ。ニヤキイ氏によると海上輸送による金属製品の輸出量は、ロシアの侵略前と比べて5分の1程度にとどまるという。

砲撃はオデッサに住む人々の生活にも影響を与えている。オデッサのモルダヴァンカ地区には「ノミの市」と呼ばれるフリーマーケットが週末に開かれ、週末の朝には売買する人々であふれる。

アスファルトに敷かれた布の上に本や化粧品、食器類などの商品が並べられている。アンティークのアコーディオンなどが並ぶこともあり、中国人が購入して自国に持ち帰ることも多いという。木工職人のウラジーミル氏はロシアの砲撃の影響で「仕事が減った上、給料が物価上昇に追いつかないため人々が出品を増やしている」と語る。

オデッサにはソ連時代の映画「戦艦ポチョムキン」で知られる巨大な階段などの観光名所も多い。ただ観光客は若年女性が目立つ一方で男性が明らかに少ない。ウクライナで施行された改正動員法による招集を警戒する男性が増えているものとみられる。

この記事はキーウ在住のフリージャーナリスト、ワジム・ペトラシュク氏の取材を基に編集しました。

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