連邦最高裁は夏季休会を前に重要判断を次々と下している=ロイター

【アトランタ=芦塚智子】米連邦最高裁は28日、法律が曖昧な場合は政府が解釈できるとした「シェブロン法理」と呼ばれる約40年にわたる行政法の考え方を覆す判断を下した。環境や公衆衛生、労働基準など広範囲の政策で政府の権限が大幅に縮小され、規制を設けにくくなる可能性がある。バイデン政権には痛手となる。

「シェブロン法理」は最高裁が1984年、米石油大手シェブロンと天然資源保護協会(NRDC)が争った裁判で示した。連邦法に明記されていなかったり曖昧だったりする問題は政府が解釈し、その解釈が合理的であれば司法は従うという原則だ。

科学や金融などに関わる複雑な分野の法律については、専門知識を持つ政府の解釈を尊重すべきだとの考え方が背景にあった。

今回の判決は「裁判所は政府機関がその権限の範囲内で行動しているかどうかについて独立して判断すべきだ」とし「法律が曖昧だからという理由だけで政府機関の解釈に服従すべきではない。シェブロン法理は却下する」と明言した。

ハリス副大統領は声明で「全米の人々は、きれいな空気や水の確保などのために政府を頼りにすることができるべきだ」と述べ、判決に失望を表明した。

ジョンソン下院議長ら下院共和党指導部は「(連邦政府の権限が大きい)『行政国家』の終わりの始まりだ」と歓迎する声明を発表した

判決は保守派判事6人が支持し、リベラル派判事3人が反対した。「小さな政府」を掲げて政府の権限縮小を求める保守派が近年、シェブロン法理の無効化を主張していた。環境保護団体や労働団体、リベラル派などは同法理の維持を求めていた。

訴訟は、政府の規則に不満を持つ漁業関係者が起こした。政府は漁業者の乱獲を防ぐために監視員を漁船に同乗させることがあり、その際の費用を漁業者が負担するよう規則で義務づけている。

連邦法は政府が監視員を同乗させることを認めているが、その費用を誰が負担するかは明記していない。下級審はシェブロン法理を根拠に政府の規則を容認した。漁業関係者は最高裁に上訴し、同法理を無効にするよう求めた。

判決は、シェブロン法理を根拠にした過去の判決に疑義を呈するものではないとした。

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