海上交通の要所である南太平洋へ、中国が軍事進出を加速する懸念が強まっている。日本は米国やオーストラリアと連携して同国の浸透を抑止する必要がある。
太平洋島しょ国のソロモン諸島でマネレ新首相が就任した。中国と緊密な関係を築いたソガバレ前政権で外務・貿易相を務め、親中政策を継続する見通しだ。前政権が中国と結んだ安全保障協定は、中国軍の派遣や艦船の寄港を認める内容を含むとみられている。
親中政策の是非が争点となった4月のソロモン総選挙(定数50)では、ソガバレ氏が率いた与党のOUR党が選挙前の38から15へと議席を大きく減らした。同氏は首相続投を断念したものの、OUR党は少数政党や無所属議員を取り込んで政権を維持し、マネレ氏を後釜に据えた。
ソガバレ氏は2019年に台湾と断交し、中国と国交を結んだ。経済支援を引き出す一方、21年に起きた政権への退陣要求デモが暴徒化すると、治安維持を理由に中国の警察当局者を受け入れた。
その延長線上で22年に安保協定、23年には警察協力協定を締結してさらに対中接近を進めた。
中国がソロモンを事実上の基地として使えば、南太平洋での米軍や豪軍の活動を監視しやすくなる。中国は昨年、パプアニューギニアにも同様な安保協定を持ちかけたという。威嚇をエスカレートさせる東シナ海や南シナ海に続き、南太平洋も軍事拠点化しようとする動きは看過できない。
米国は22年に太平洋島しょ国と初の首脳会議を開き、23年にはクック諸島とニウエを新たに国家承認した。豪州もこの地域で国防や経済面での支援を強化する。
日本は2月に初めて太平洋島しょ5カ国と共同のサイバー防衛演習を実施し、今後は参加国・地域をさらに増やす方針だ。日本が1997年以降、3年ごとに開催してきた「太平洋・島サミット」は次期会合を7月に控える。積み上げてきた友好関係を土台に、関与と協力を一段と深めるべきだ。
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