東南アジアの経済・金融の中心として発展を続けてきた都市国家シンガポールが岐路に立たされています。日本経済新聞社の英文媒体「Nikkei Asia」で4月に最も読まれたのは、日本や欧米の企業が地域統括機能をシンガポール以外に移す企業が増えていることを伝えた記事でした。在任20年のリー・シェンロン首相からローレンス・ウォン副首相兼財務相への首相交代を15日に控え、今後の国家戦略に関心が高まっています。
移転先候補となるタイやマレーシアは外資企業を招き入れるために税制優遇措置を充実させており、域内国間の「誘致合戦」が過熱しています。SNS(交流サイト)のコメント欄では「インターネットや人工知能(AI)が(働き方を)変えたからだ」「フィリピンも候補にならないか」など読者間でも活発に意見が交わされました。
【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】Singapore loses shine as Southeast Asia base for multinationals
(https://asia.nikkei.com/Business/Business-trends/Singapore-loses-shine-as-Southeast-Asia-base-for-multinationals)
リー氏が5月に首相職を退くと表明したことを受け、4月23日の政治・経済特集「Asia Insight」では政権を引き継ぐウォン氏が直面する課題に焦点をあてました。
米国と中国の対立が深まるなか「貿易立国」としてどう立ち回るのか、市民生活を圧迫する物価上昇にどう対処するのか。記事に登場する31歳の女性は、生活コストが高すぎるため海外移住を考えていると言います。
少子化も喫緊の課題となるシンガポールが引き続き東南アジア経済の中心であり続けるためには、新世代の政治リーダーが進むべき道筋を示せるかカギを握ります。
ライフ&アーツ 米国の「文化戦争」、翻訳者も標的
日本のアニメや漫画の人気が米国で高まる中、作品の翻訳者がネット上などで攻撃の標的となるケースが増えています。オリジナル作品に愛着を持つファンが、英訳の過程で外国の読者にわかりやすいように表現を言い換えたり、説明を追加するといった「編集」の内容について異を唱えています。
近年はネット配信で原作のアニメを視聴できるようになり「編集」の確認が容易になりました。米大統領選を控え、価値観や社会制度を巡って保守派とリベラル派が対立する「文化戦争」が話題となっていますが、今回の記事ではそれがアニメ業界にも飛び火している状況を伝えています。
【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】U.S. culture wars reach anime with targeting of translators
(https://asia.nikkei.com/Life-Arts/Arts/U.S.-culture-wars-reach-anime-with-targeting-of-translators)
オピニオン ベトナムへの西側の接近と「中国化」
ISEASユソフ・イシャク研究所アソシエイト・フェローのディエン・ルオン氏は、ベトナム当局が国内の企業やメディアなど広範に監視や統制を強めようとしている実態を取り上げました。3月に流出した共産党の内部資料によると、労働組合や外国から帰国した留学生、外国人投資家にも網をかけようとしています。
米中対立が深まるなか、ベトナムの地政学上の重要性は高まっています。米国はベトナムが中国やロシアに接近しないように同国内の抑圧的政策への批判を控えるようになりつつあり、ベトナム当局の行動が大胆になっていると分析しています。
【この記事の英文をNikkei Asiaで読む】As West draws closer to Vietnam, Hanoi gets more like Beijing
(https://asia.nikkei.com/Opinion/As-West-draws-closer-to-Vietnam-Hanoi-gets-more-like-Beijing)
国・地域別トップアクセス
@タイ カンボジアに幽霊ビル500棟
タイではカンボジア南部のリゾート地シアヌークビルから中国の不動産関連企業が手を引いていることを伝えた記事が首位でした。中国の「一帯一路」の要衝として中国資本が流入していましたが、中国国内の不動産不況やコロナ禍で撤退しました。残ったのは500棟を超える「幽霊ビル」。政府は救済に向けて税免除の措置を打ち出すなど対策を急いでいます。
@マレーシア 国内最大港が拡張計画
マレーシア最大のクラン港の拡張計画についての記事は、マレーシアや隣国シンガポールの読者の関心を集めました。同港は東南アジアでシンガポールに次ぐ規模。米中対立などを背景に世界の企業がサプライチェーン(供給網)を再構築するなか、物流需要を取り込んでいこうとする長期的な戦略を運営会社のトップインタビューを通じて詳しく伝えました。
@香港 衣料大手ジョルダーノがCEO解任
香港ではアパレル大手の佐丹奴国際(ジョルダーノ・インターナショナル)の最高経営責任者(CEO)だった劉国権氏に対する解任案が賛成多数で可決されたことを報じた記事が読まれました。日本の「ユニクロ」の創業にも影響を与えた企業でしたが、業績が低迷。筆頭株主の大手財閥が解任に動いたと伝えています。
@米国 中国の「空飛ぶ車」離陸へ秒読み
米国の読者の関心を最も集めたのは、中国で相次ぐ「空飛ぶ車」の開発の動きをまとめた記事でした。車載電池など電気自動車(EV)関連の技術の蓄積を生かし、電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発しています。米ボーイングの幹部が2030年までにアジアでeVTOL事業に参入すると表明したという記事も在米読者の関心を集めました。
お知らせ
Nikkei Asiaは法人会員向けに、好みのキーワードで記事を自動で収集する「My News」機能を導入しました。My Newsページで「Bank of Japan」「iPhone」などのキーワードを設定すると、それらのキーワードを含む記事を一覧できるようになります。また、関連する新着記事をメールで紹介する「My News Mail」を毎日配信します。自分の仕事や趣味に必要な記事をすばやく、効率的に見つけられるようになります。今なら5月31日までの期間限定で、1人あたり月800円(税抜き、5人以上の場合、通常は税抜き1000円)で購読できる法人購読キャンペーンを実施していますので、こちらのサイト(https://promotion.asia.nikkei.com/houjin-2024sp)からぜひ法人でのお申し込みをご検討ください。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。