JERAの再生エネ部門が手掛けるドイツの洋上風力発電所

国内発電大手のJERAは9日、英石油大手BPと洋上風力事業を統合すると発表した。2025年9月にも折半出資の新会社を設け、両社の関連資産ほぼ全てを移す。新会社を通じて30年までに最大58億ドル(約8700億円)を投じ、米欧やアジアで発電所を新設する。インフレで風力の建設費が膨らむ中、両社の事業統合は再編の呼び水となりそうだ。

英国に折半出資の事業会社「JERA Nex bp(ジェラ・ネックス・ビーピー)」を設ける。稼働済みの発電所で約100万キロワット、建設・準備中で約1200万キロワットの資産を新会社へ移す。

JERAによると、開発中も含めた電源の保有量では英BPは世界5位、JERAは14位とみられる。新会社は首位のオーステッド(デンマーク)などに次ぐ4位となる見通しだ。

関係当局の許可を前提に新会社を発足させる。最高経営責任者(CEO)はJERA、最高財務責任者(CFO)はBPが指名する。資本金などは非公表だが、30年までに新会社を通じて日欧や米国で開発中の10カ所超の発電事業を前進させる。

JERAは4月に再生可能エネルギーの開発を35年度までに約6倍の2000万キロワットに増やす計画を公表した。同時期に英国に新設した子会社へ再生エネ事業を集約し、主に欧州やアジアで洋上風力の開発を推進する計画を示していた。

BPは化石燃料事業の再強化と再生エネ事業の再編を模索していた。金融市場から株主還元の強化を迫られ、収益性の高い石油や天然ガス投資の優先度が高まっていた。

物価高で採算が低下する再生エネ事業は縮小していた。6月には洋上風力事業で新規の開発・採用の停止を決めたことが明らかとなり、9月には米国の陸上風力事業の売却も発表していた。

BPは洋上風力発電で運転中の発電所はほぼ無いが、開発・準備中だと英米やドイツでJERAの倍以上となる1000万キロワット弱の事業を手掛ける。JERAは23年にベルギーの洋上風力大手を買収したが、洋上風力で先行する米欧の事業基盤が弱い。BPと連合を形成して大型開発が進む米欧市場への参入を本格化する。

洋上風力発電で上位企業の「連合」が誕生するのは初めてとみられる。背景にあるのが世界的なインフレによる開発コストの増加だ。JERAによると、風車の調達価格は4年前の1.5〜1.8倍に上昇したという。コスト上昇で事業の採算悪化が表面化している。

過去1年に世界で撤退・延期となった洋上風力発電事業の計画は、23年に世界で新規導入された発電容量の5割に相当する。ノルウェーの石油大手エクイノールは9月までに、フランスで計画してきた洋上風力発電事業からの撤退を決めた。オーステッドも2月に最大800人の人員削減と、ノルウェーなど3カ国からの撤退を決めている。

従来は事業ごとの企業体でリスクを分散し、再編も事業単位での権益売却が主流だった。ただ化石燃料や火力発電事業も手掛ける事業者にとって、世界的なインフレで複数の地域にまたがる事業を単独では管理しきれなくなっている。

トランプ次期米大統領が化石燃料に傾斜する姿勢を示し、再生エネ全般に逆風が吹く。もっとも中長期では大量の再生エネ電力を安定して発電できる洋上風力の優位性は揺るがない見通しだ。今回のJERAとBPの「連合」形成は、洋上風力事業の継続に向けた再編を後押しする可能性がある。

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