訪日客には家電以外の日用品も人気だ(東京都千代田区のビックカメラ有楽町店)

ビックカメラが11日発表した2024年8月期の連結決算は、純利益が前の期の4.7倍となる139億円だった。インバウンド(訪日外国人)の需要が急回復し、カメラや時計など高単価な製品の売り上げが伸びた。好業績を踏まえて株主への利益還元を手厚くするため、配当は年33円(前の期は15円)と従来予想より9円積み増す。

秋保徹社長は都内で同日開いた記者会見で「消費動向は厳しいが、インバウンドが大きな追い風になった」と強調した。

売上高は13%増の9225億円だった。スマートフォン販売会社のTDモバイル(東京・港)を23年10月に連結子会社化し、スマホ関連の売上高は1895億円と53%増えた。

訪日客向けの免税売上高は2倍の667億円となり過去最高を更新した。22年8月期の14億円から急回復している。訪日客需要は海外のインフルエンサーにPR動画を流してもらったり、家電や日用品の割引クーポンを配布したりと、競合のヨドバシカメラが手掛けていない独自の施策が奏功したという。

同日、25年8月期の連結純利益が前期比9%増の152億円になる見通しだと発表した。売上高が3%増の9520億円を見込む。配当は年36円と前期より3円増やす。

免税売上高は15%増の768億円と過去最高をめざす。23日には大阪・心斎橋に訪日客に特化した店舗を出店する。美容家電やゲーム、時計などの商品を陳列するほか、訪日客需要が高まるウイスキーや日本酒の専門売り場を置く。

ネット通販事業もてこ入れする。前期は前の期比6%減の1191億円と落ち込んでいた。ビックカメラの通販サイトはこれまで2000円未満の注文の送料は有料だったが、9月から最低購入額を撤廃して基本送料を無料にした。購入しやすくし販売を伸ばす。

インバウンド需要の拡大などプラス要因も多いなか、市場が懸念するのは競合のヨドバシホールディングスの動きだ。ヨドバシは25年夏にも西武池袋本店の半分程度のスペースを活用し、家電店「ヨドバシカメラ」を出店する予定だ。

池袋は同地に本社を置くビックカメラが複数店舗を展開している。売上高はビックカメラ単体の「5%程度」(アナリスト)を占めるとされる稼ぎ頭の地域だ。秋保社長はヨドバシの池袋店について、「猛暑や雨も関係なく来店できる駅直結型だ。駅のビルに人が滞留して外に出なくなることは懸念している」と話す。

ビックカメラは8月に池袋駅前に傘下の「ソフマップ」ブランドの店舗を出店した。ヨドバシが手薄な中古品の買い取り・販売に特化した店で対抗する。訪日客需要のほか、国内客向けやネット通販をどこまで伸ばせるか成長軌道を保つ上で課題になる。

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