日銀の植田和男総裁は31日午後、金融政策決定会合後に会見し、ことし3月以来となる追加利上げの決定について、「賃金と物価が緩やかに上昇していくとみられる。(2%の物価上昇目標に向け)おおむね見通しに沿っている」ことを理由に挙げた。また、円安によって輸入品などの物価が上がっていることを踏まえ「物価の上振れリスクに注意する状況でもある」と付け加えた。

◆円安で上昇する物価「上振れリスクに注意する状況」

 今回の決定会合をめぐっては、歴史的な円安が食料品やエネルギー価格などを上昇させ日本経済にマイナスの影響を及ぼしていることや、金利の高いアメリカとの日米金利差を踏まえ、利上げによって円安ドル高に歯止めをかけるかどうかが注目された。

日銀の植田和男総裁(資料写真)

 こうした中、植田総裁は「円安により輸入物価が上昇し、(物価の)上振れリスクに注意する状況だ」と指摘。足元の円安が続けば、輸入品の価格上昇が止まらず想定以上にインフレが進みかねない状況に危機感を抱いたことを示唆。利上げを決める一因となったことを明かした。さらに、「2%の物価上昇目標を実現する観点から、少し早めに調整した方がいいと判断した」と述べた。  金利の引き上げは一般的に、景気を冷やす効果をもたらす。こうした影響について、植田総裁は「利上げといっても金利水準は非常に低い。景気に大きなマイナスの影響を与えるものではない」とした。また、「景気の腰折れリスクを高めるとの指摘だが、(利上げ後の)金利は非常に低い水準だ」とも強調した。

◆「政府とは基本的な物価の見方で認識を共有している」

 今回の利上げ決定に際し、政府・与党からは日銀に利上げを求める声が相次いでいた。こうした政治的圧力について問われると、植田総裁は「そうした声は把握しているが、個別のコメントにコメントはしない」と明言を避けた。一方で、「政府とは基本的な物価の見方で認識を共有している」とも付け加えた。  日銀はこの日の金融政策決定会合で、政策金利(無担保コール翌日物=短期金利)を現在の「0〜0.1%程度」から「0.25%程度」に利上げすることを決定した。利上げは今年3月にマイナス金利政策を解除して以来となる。  また、「異次元の金融緩和」として実施している長期国債の買い入れ額を減額する方針も決定した。これまで毎月6兆円程度を買い入れていたが、今後2年間で3兆円程度まで減額する方針も決定した。(石川智規) 

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