NTT東西が廃止する電話帳「タウンページ」

NTT東日本とNTT西日本は19日、電話番号案内サービス「104」と紙の電話帳「タウンページ」の発行を2026年3月に終えると発表した。いずれも開始から約135年で幕を下ろす。携帯電話やスマートフォンの普及に伴う固定電話の需要低迷が背景にあるが、固定電話サービスの全国提供は義務として定められている。「レガシー(遺産)」を巡る苦悩は深まる。

「テクノロジーの発展に伴い、ほぼ役割を終えた」。NTT東西が19日に開いたオンライン説明会で、NTT東の種村則明基盤サービス部門長はサービス終了の理由をこう説明した。近年はそれぞれ年数十億円の赤字事業だったことも明らかにした。

番号案内と電話帳は1890年に始まり、形を変えながら続いてきた。だが、情報入手の手段がインターネットに変わり、需要は激減していた。104の利用回数は2023年度に1600万回とピーク時の1989年度に比べ99%減。電話帳も2023年度の発行部数は2660万部と00年度比56%減だった。

両サービスの終了後はオンラインの電話帳サービス「iタウンページ」の利用を促す。24年秋にもリニューアルして検索機能を向上するほか、紙の電話帳の利用者でも使いやすいようなデザインに変更する。

NTT東西は個人の連絡先を載せた電話帳「ハローページ」の発行も23年に終えている。104とタウンページの終了で、レガシー整理は一区切りを迎える。同様に需要が減っている電報については「市場動向を踏まえて検討していく」(種村氏)とした。

一方で固定電話は当面、整理対象になり得ない見込みだ。NTT法が全国一律のユニバーサルサービスとして提供するよう、NTTに義務付けているためだ。法律の見直しを巡る議論は23年に始まったが、同サービスのあり方は引き続き検討課題になっている。

固定電話の契約数は1997年11月の6322万件をピークに、2023年3月には1354万件まで減った。最近の減少ペースを踏まえると、今後数年で1000万件を切る可能性がある。

NTTの25年3月期は固定電話事業の低迷が響き、連結純利益(国際会計基準)は前期比14%減の1兆1000億円になる見通し。35年度以降も現状のままサービスを続けた場合、赤字額は年900億円規模と22年度の3倍に膨らむと試算する。

NTTは同法の廃止を主張しており、全国提供義務をなくした場合に生じる課題などが今後の論点になる。ただ、KDDIやソフトバンクなど競合の反発も強く、曲折が予想される。NTTにはスマホ時代のユニバーサルサービスのあり方について丁寧な説明を尽くしていくことが求められる。

(宮嶋梓帆、岡本康輝)

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