9日に上場廃止となった大正製薬ホールディングス(HD)は8日に内臓脂肪を減らす市販薬「アライ」を発売した。体内で脂肪の吸収を阻害する仕組みの治療薬だ。海外では市販薬として販売されているが、肥満を改善する医薬品の販売が日本でもようやく始まった。大正製薬HDは非上場化後に市販薬の製品群を拡充し成長を目指す。

アライは体内の脂肪の吸収を抑えることで内臓脂肪の蓄積を阻害する。食事中に含まれる脂肪の約25%を吸収せずに排出する。体重減少効果は3%程度で限定的だが、摂取カロリーを抑えることができるようになる。成分の「オルリスタット」は、1999年に医療用として米国で承認され、2007年に市販薬として販売された。欧米やアジア各国でも薬店で一般販売されている。

日本では武田薬品工業が13年に同様の仕組みの「オブリーン」を医療目的の肥満症薬として製造販売承認を取得したが、薬価がつかず販売されなかった。今回のアライは肥満症ではなく、内臓脂肪減少という形で一般用医薬品(OTC)として販売されることになった。

副作用もある。油分を便として排出するため、下痢や軟便などが起きる。大正製薬は服用にあたって「おむつ」や「便漏れパッド」などの着用を推奨している。

購入条件も厳しく、服用できるのは18歳以上の成人で、男性は腹囲が85センチ以上、女性は90センチ以上で、さらに体格指数(BMI)35未満の人が対象となる。BMI25以上で、脂質異常症や高血圧といった疾患を持つ人や妊娠中・授乳中の女性は使用できない。

また初回購入時は3カ月以上にわたって食事や運動といった生活習慣の改善に取り組んでいることや、購入1カ月前の食事・運動の内容、体重や腹囲を記録しておくことも条件となるため、気軽に購入・使用を始めることはできない。

日本肥満学会はBMIが25以上の状態を肥満、BMIが25以上で、高血圧や糖尿病などの合併症があり、医学的に減量を必要とする状態を「肥満症」と定めている。肥満症の人はアライの対象外となる。

もっとも肥満症に対してはオルリスタットとは違う仕組みのGLP-1というタイプの治療薬が登場し、デンマークのノボノルディスクの肥満症治療薬「ウゴービ」が医療用として処方が始まっている。欧米では肥満症の「特効薬」として普及が進む。さらに新たな治療薬候補の開発を巡ってM&A(合併・買収)などの動きも活発化している。

大正製薬HDは非上場化後の戦略の一つとして海外での有望なOTCブランドの買収などで品ぞろえを増やし、自社のネット販売サイトにも積極的に投資していく考えのようだ。

同社は上場廃止で「中長期的な視点から抜本的かつ機動的な施策に取り組む」と説明しており、主力の「リポビタン」などに加え、アライなどの自社製品を増やすことで成長を目指す考えだ。

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