全国の栄養教諭や調理員が学校給食の腕前を競う「全国学校給食甲子園」。12月8日に東京で決勝があり、食育授業コンテストに出場した岩手県遠野市学校給食センター栄養教諭の平野沙紀さん(33)が日本一となる最優秀賞(キッコーマン賞)に輝いた。
食育授業コンテストには予選を勝ち抜いた23人の栄養教諭・学校栄養職員が出場した。事前に5分間の食育授業の動画を提出し、審査された。
平野さんは、伝統野菜の「遠野早池峰菜(はやちねな)」を中心に授業を展開した。実際に生産した農家を訪ねてインタビューも盛り込んだ。
平野さんは動画の中で、「早池峰菜は世界中を探しても遠野にしかない伝統野菜。寒さの厳しい遠野で冬から春にかけて収穫でき、貴重なビタミン源として食べられてきた。しかし、いつしか栽培されなくなり、姿を消した」と表情豊かに語りかけた。
さらに「早池峰菜を救ったのは遠野緑峰高校の生徒です。17年前、学校の畑で育て始め、栽培してくれる農家を探して広めました。種をとり、繰り返し育てていくことで、丈夫に育つ、遠野にぴったりの種になる」と笑顔を交えながら話した。
審査員からは「伝えたいことがテンポよく視覚と聴覚を刺激するように入ってきた。SDGsにも触れながらわかりやすく説明されていた」などと高く評価された。動画はYouTubeにもアップされた。
岩手県花巻市出身の平野さんは「子どもと触れ合いながら、食を通じて幸せを考えたい」と学校給食を仕事に選んだ。岩泉、釜石を経て遠野に赴任して3年目になる。積極的に郷土料理、地域食材を採り入れ、今年は地元の鹿肉を初めて食材に使ったという。
8日の決勝では、実際に会場で給食を作る調理コンテストも実施された。平野さんは北海道・東北ブロック代表として調理員の運萬里花さんと出場し、優秀賞を獲得した。コンテストには全国1051チームがエントリー。4次審査を通過した12チームで決勝を戦った。
2人が掲げた献立のテーマは「遠野の伝統を食べて伝えよう」。地元食材を使い、早池峰菜めしや切干大根と早池峰菜のどべっこ煮、つぶつぶせんべい汁などを提供した。
審査員からは「郷土愛を育む彩りよい献立になっている。郷土の野菜を知ってほしいとのメッセージが込められている」と評価された。
平野さんは「早池峰菜を子どもたちに知ってもらいたいと思い、授業を考えた。今も調理員さんや市民から、地元の味付けなどについて助言を受けることが多い。思い出してもらえる給食を提供できるように挑戦していきたい」と話した。
遠野市学校給食センターは市内の小中など16校(約1750食)に給食を提供している。来年2月には参加者を募り、受賞献立の試食会(定員30人、1食350円)が同センターで開かれる予定。
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