国際教育到達度評価学会(IEA、本部オランダ・ドイツ)は4日、小学4年と中学2年が対象の国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の2023年の結果を発表した。日本は4教科全てで世界トップレベルを維持する一方で、「理数が得意」とする児童生徒の割合は減少した。
日本は各国と比べて理系人材が少なく、苦手意識が進路選択に影響している可能性がある。
学力は世界3〜6位
TIMSSは60以上の国・地域の教育研究機関で構成するIEAが4年に1回実施する。23年調査は58カ国・地域の小学校と44カ国・地域の中学校が参加した。日本では23年3月、約7800人の小中学生がテストを受けた。
日本の平均点の順位は小4の算数が5位、理科は6位。中2は数学が4位、理科は3位だった。小4理科の順位は前回調査から2つ下げ、過去最低となったが、5位のイングランドとわずか1点差だった。
「ゆとり教育」が続いていた1995年から2011年あたりまで、4教科とも平均点はなかなか改善しなかった。中2数学は11年には調査開始時を11ポイント下回る570点まで落ち込んだ。一方、新学習指導要領が全面実施され「脱ゆとり教育」が進んだ15年には4教科とも平均点が上がり、それ以降は上位を維持している。
「得意」は全教科で減少
一方で4教科全てで、「得意だ」とする割合が前回調査より減少した。小4理科以外は国際平均を下回った。
「算数は得意」と回答した小4は56%で、国際平均から8ポイント低く、前回調査から9ポイント下げた。「理科は得意」と答えた小4は前回調査を5ポイント下回る81%。中2理科は同2ポイント減の45%だった。
理数系の授業は数式や図形を使った問題を解くなど、児童生徒の生活や関心と結びつきにくくなりがちだ。進学のための受験勉強でより苦手意識が強くなることがかねて日本の課題とされてきた。
筑波大の清水美憲教授(数学教育学)は「小4は新型コロナウイルス禍に低学年期を過ごした。感染拡大期には他の児童との議論に制約があり、プリントを用いた個別学習が中心だった。このことが、学びの楽しさや得意さを感じる子どもの減少につながった可能性がある」と分析する。
女子は「平均点」「得意」「楽しい」低く
男女別にみると、小4理科以外は、得意と答えた女子が男子に比べそれぞれ20ポイント程度低かった。中学女子は数学・理科ともに2〜3割しか得意だと認識していなかった。
それぞれの勉強が「楽しい」と感じる割合も、全教科で女子が男子を下回った。特に中2理科は男子が76%、女子が63%で13ポイントの差があった。平均得点でも差があり、小4理科以外は男子より女子の方が10ポイント以上低かった。
理数系に対する苦手意識は進路や職業の選択に影響を与えかねない。「数学を使うことが含まれる職業につきたい」と答えた中2は22%で、国際平均より26ポイントも低い。「理科を使うことが含まれる職業につきたい」と答えた中2も27%にとどまり、国際平均と30ポイント以上の差がある。
文部科学省の担当者は「得意と思う小中学生や理数系の職業につきたい中学生が減少していることは課題で、中長期的に改善を図る必要がある」と話す。
学校現場は理数好きを育てようと授業改善を急ぐ。茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校は、実験の様子を児童がタブレット端末で撮影するなど、積極的にICT(情報通信技術)を活用する。斎藤桃子教諭は「実験を何度も見返したり、他の班の実験と比較したりでき、新たな気づきや深い学びにつながる」と狙いを話す。
理系選ぶ大学生の割合、OECDで最低水準
日本では大学入学者のうち理工系に入学する割合は17%で、経済協力開発機構(OECD)平均の27%に比べて低い。ドイツ(40%)、韓国(34%)から後れを取り、OECD加盟国で最低クラスだ。
清水教授は「日常と関連した問題を重視し、授業を活動中心の探究型にすることで、子どもが自分ごととして取り組めるようにして、将来的な理系人材の輩出を目指すことが大切である」と指摘した。
各国の結果は、韓国や台湾などアジアの国・地域が上位を占めた。シンガポールは前回調査に続いて全4教科でトップだった。
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