鹿児島県の屋久島沖で米空軍輸送機CV22オスプレイが墜落し、搭乗員8人が死亡した事故から29日で1年がたつ。今年3月に国内で飛行を再開後も機体のトラブルは相次ぎ、専門家からはオスプレイの構造上の問題を指摘する声が上がる。住民の不安を置き去りにしたまま、軍事の日米一体化に伴う新たな配備と運用拡大が進む。(太田理英子、宮畑譲)

◆シマアジ漁期なのに1カ月中断

 米軍横田基地(東京都)所属のCV22オスプレイが墜落した昨年の事故。機体は米軍岩国基地(山口県)から米軍嘉手納基地(沖縄県)に向かう途中だった。

2023年11月30日、鹿児島県屋久島の漁協関係者が回収したオスプレイの残骸

 「やっぱり落ちたかと思った」。屋久島町の無職村本勉さん(76)は、墜落現場と屋久島空港の中間にある自宅にいたとき、すさまじい爆発音で事故に気付いたという。  屋久島漁業協同組合によると、事故当時、延べ16隻の地元漁船が搭乗員の捜索や救助に協力したほか、漁期に入っていたシマアジ漁が約1カ月間中断された。米軍は各国でのオスプレイ飛行を一時停止したが、今年3月に日本国内での運用を再開した。8月には機体左側の変速機内部で歯車が破断したなどとする、事故調査報告書を公表した。

◆飛行再開後も相次ぐトラブル

 事故から1年がたつ今、村本さんは「根本原因を突き止めて対策しなければまた事故が起きるし、陸上ならもっと大惨事になる」と危ぶむ。同漁協によると、今月上旬、米軍と協議の上で防衛省から漁協側に、数百万円規模の補償金が支払われたという。29日には、町役場で米軍による慰霊祭が営まれる。  開発段階からトラブルが相次いでいたオスプレイ。米軍は2007年に実戦配備したが、国内外で事故が後を絶たない。近年は、2022年に米カリフォルニア州とノルウェー、2023年にオーストラリアで墜落による死亡事故が発生。日本では、2016年に沖縄県名護市沿岸部に不時着して大破している。

左翼が地面と接触し、機体の一部が損傷した陸上自衛隊のV22オスプレイ=2024年10月27日、沖縄・与那国島で(基地いらないチーム石垣提供)

 今年3月の飛行再開後も機体トラブルは続く。10月には、陸上自衛隊与那国駐屯地(沖縄県)で離陸時に左翼が地面と接触して機体が一部損傷。鹿児島県では、同月に海上自衛隊鹿屋航空基地、今月14、21両日には奄美大島の奄美空港でそれぞれ緊急着陸した。

◆抗議に動かない議会、行政

 奄美大島を含む奄美群島は近年、陸自駐屯地の開設や徳之島での日米共同演習が進められるなど、南西諸島の防衛力を強化する「南西シフト」の重要拠点になりつつある。  「3月の飛行再開後、昼夜問わず60回は飛行を確認している。米軍の勝手放題だ」。奄美市民で市民団体「戦争のための自衛隊配備に反対する奄美ネット」代表の城村(じょうむら)典文さん(72)は、そう嘆く。屋久島沖の事故前の状態に戻っているといい、低空飛行による家の揺れ、ごう音に悩まされる。「台湾有事が理由にされるが、オスプレイ購入も含めて米国の戦略と軍事産業のため。島が米国の軍事要塞(ようさい)化している」。米軍に抗議するよう訴えても、行政や議会は動かない。「いつ墜落してもおかしくないのに、一体どこに訴えればいいのか」と危機感を募らせる。

◆「操縦士側にも問題」と結論

 ヘリコプターのように垂直離着陸ができ、航続距離が長く、スピードも出せるオスプレイ。ただ、複雑な構造からメンテナンスや操縦が難しいとされている。  屋久島沖で起きた事故では、変速機が破損したことで片側エンジンの動力がモーターに伝わらなくなり、バランスを失って墜落。不具合を示す警報が複数回出ていたのに、飛行を続けた操縦士の判断にも問題があったと結論づけられた。  2022年6月に、米カリフォルニア州で海兵...

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