福井県敦賀市の日本原子力発電敦賀原発2号機=2024年7月26日、本社ヘリ「まなづる」から(篠原麻希撮影)

 原子力規制委員会は13日、日本原子力発電敦賀原発2号機(福井県)の再稼働を認めないと、正式に決めた。原発専業の原電は、東京電力福島第1原発事故以降ほぼ発電できず「商品」がないのに、電力5社から基本料金として13年間に計約1兆4500億円を受け取り、延命してきた。再稼働の見通しが立たず、廃炉ビジネスなどに活路を見いだすが、収入の柱にはなっていない。(荒井六貴)

◆「不適合」の敦賀原発2号機、再稼働をあきらめず

 「再申請に必要な追加調査の内容を、社外の専門家の意見を踏まえながら具体化する。稼働に向けて取り組む」。再稼働不可とする規制委の決定に、原電はコメントを発表し、再申請の方針を改めて示した。再稼働の断念や廃炉にする考えは、否定し続ける。

7月、記者団の質問に答える日本原子力発電の村松衛社長(右)=福井県美浜町で

 あきらめられない理由に、経営の屋台骨の基本料金の存在がある。売電先の東京、東北、関西、中部、北陸の電力5社が、発電の有無にかかわらず原電に払い続けてきた。国民からの電気料金で原電を支えている構図だ。

◆電力5社からの「基本料金」で延命

 福島の事故当時、原電は敦賀1、2号機、東海第2(茨城県)を動かしていたが、2011年5月に2号機が停止して以来、売電はない。2023年度までの13年間に受け取った1兆4000億円を超える基本料金は、収益の約98%を占める。基本料金なしに経営は成り立たない。  敦賀1号機は廃炉作業中で、2号機も再稼働できないとなれば、電力供給を受けるはずだった関電、中部電、北陸電は基本料金を払う意味がなくなる。

◆東海第2原発の再稼働も不透明な状況

 東海第2は事故対策工事で不具合が見つかり、水戸地裁判決で運転差し止めを命じられた上、周辺自治体の理解が進まず、再稼働への道が見えない。売電先の東電と東北電は基本料金を払い、計約2300億円とされる工事費の一部も支援する。再稼働の道が断たれれば、両社の支えも、これまで通りとは行かなくなる恐れがある。

茨城県東海村の日本原子力発電東海第2原発

 関電や東電の株主総会では、基本料金を払い続けることに疑問の声が出る。電力5社は原発の管理を理由に原電を支え続ける構えだが、再稼働の芽がなくなれば、株主への説明は一層難しくなる。

◆廃炉ビジネスに活路を求めているが…

 売電以外の収入源の模索はしている。3月公表の「経営の基本計画」で、国内原発で先行的に廃炉を進めてきた東海原発(茨城県)で得たノウハウを念頭に、廃炉のビジネス化を掲げた。他社の廃炉の技術支援や、米国で廃炉や放射性廃棄物の管理を担うエナジーソリューションズ社との連携を進めようとしている。  ただ、エナジー社と8年前に協力協定を結んだが、原電の経営資料を見る限り大きな収益になっていない。原電担当者も「なかなか育っていない」と認める。

◆「各社の原発部門を統合していく必要」

 原電の元幹部は「原電を廃炉専門会社にする考えもあるが、それぞれの電力会社が個別で廃炉に取り組んでおり、その線は薄い」とみる。社内で社員採用を担当したことを踏まえ「人材確保は原発事故前から大変だった。原発を維持するには、各社の原発部門を統合していく必要もあるのでは」という。その上で「今の状況を考えれば、東電と関電で原電を分割吸収することが合理的だ」と説いた。

 敦賀原発2号機 1987年に営業運転を開始し、出力は116万キロワット。2011年5月に冷却水の放射能濃度が上がるトラブルで停止。原電は15年11月、再稼働に向けた審査を原子力規制委員会に申請した。地質データの書き換えや資料に1000カ所以上の誤りが発覚し、審査は2度中断。規制委が原電本店(東京)に異例の検査に入った。



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