外為法違反罪に問われた社長らの起訴が取り消された「大川原化工機」(横浜市)元顧問の相嶋静夫さん=当時(72)=が、拘置所の対応が不適切だったためにがんで死亡したとして、遺族が国に1000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は6日、請求を認めなかった一審東京地裁判決を支持し、遺族側の控訴を棄却した。

東京高裁が入る裁判所合同庁舎(資料写真)

◆裁判長「医学的に不適切とは言えない」

 相嶋さんは2020年3月、大川原正明社長らとともに警視庁に逮捕された。東京拘置所に勾留中の10月に胃がんと判明。拘留停止を経て11月に横浜市内の病院に入院したが、21年2月に亡くなった。  木納敏和裁判長は判決理由で、相嶋さんが胃痛を訴えた後、拘置所の医師がすぐに内視鏡検査などをしなかったことについて「医学的に不適切とは言えない」と指摘。外部の病院に入院させなかったことも「緊急性は認められない」とし、いずれも医師に義務違反をはなかったと判断した。  ただ、相嶋さんが外部の病院で「専門医による胃がんの治療を受けられると理解していなかったことがうかがれる」と指摘。「今後このような事態を防ぐ対応を検討することが望まれる」と国に注文を付けた。  判決後、相嶋さんの長男(51)は報道各社の取材に応じ「判決は残念。拘置所に入ると健康が犠牲になると、裁判所も認めた。こういう国に生きているんだと理解した」と憤った。(加藤益丈)

 大川原化工機を巡る事件 警視庁公安部が2020年3月、軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとする外為法違反容疑で大川原正明社長ら3人を逮捕し、東京地検が起訴したが、21年7月に取り消した。1年近く身柄拘束された社長らが国と東京都に賠償を求めて提訴。東京地裁での証人尋問で、公安部捜査員が事件を「捏造(ねつぞう)」と証言した。地裁判決は捜査の違法性を認め、1億6000万円の賠償を命じたが、双方が控訴。高裁での審理で、別の捜査員が事件について「決定権を持つ人の欲だと思う。問題があった」と述べた。12月25日に結審予定。



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