フリーランスで働く人は国内には462万人いるとされ、雇われて働く労働者と異なり自由に働き方を決められる一方で、仕事を発注する側の企業などに比べて立場が弱いことから不利益を受けやすいとされています。

そこで、フリーランスが安心して働ける環境を作るため、11月1日に新たな法律が施行されました。

新しい法律では、フリーランスに業務を委託した企業などの事業者に対して、書面などで報酬額や支払い期日などの取引条件を直ちに明示するよう求めています。

さらに、業務委託の期間が1か月以上の場合は、通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」や、あらかじめ定めた報酬の減額などを禁止します。

また、業務委託の期間が6か月以上の場合は、フリーランスからの申し出に応じて、育児や介護と業務を両立できるよう配慮することが義務づけられます。

そして、ハラスメントの相談や苦情に対応するための体制の整備が義務づけられ、相談したことを理由とした契約の解除など不利益な取り扱いを禁じています。

公正取引委員会や厚生労働省などは、違反があった場合は事業者に行政指導などを行うとともに、ホームページなどを通して法律の内容をさらに周知していきたいとしています。

厚労省でも新たな支援策

《労災保険の特別加入制度》

事業者から業務委託を受けて働くすべてのフリーランスが11月1日から労災保険に特別加入できるようになりました。

みずから保険料を支払えば、仕事や通勤中にけがや病気、死亡した時、労災保険による補償を受けられます。

この労災保険の特別加入は、建設現場で働く「一人親方」や、自転車で料理などを届ける配達員などフリーランスの一部ではすでに認められていて、今回、対象が拡大しました。

《「労働者性」について労基署に相談窓口》

フリーランスとして事業者と業務委託の契約を結んだものの、勤務の時間や場所、仕事の進め方などを具体的に指示され、実態は雇用された労働者と変わらない働き方をする人を対象にした相談窓口が1日、全国の労働基準監督署に設けられます。

厚生労働省によりますと、こうした人たちは労働基準法などに基づく保護が受けられず、長時間労働や過重労働、残業代の未払いなどが問題となっているケースがあるということです。

そこで、厚生労働省は、窓口を訪れた相談者が「労働者」にあたるかどうか判断し、法律違反が疑われる場合は、発注側の事業者を指導することにしています。

公取委 “迅速で適切な執行を行っていく”

公正取引委員会は、フリーランスに関する取り引きの適正化が図られるよう、1日に施行された法律の迅速で適切な執行を行っていくとしています。

公正取引委員会は、法律違反があった場合、事業者に是正を求める勧告や命令を出すことができます。

是正を求める命令に違反した場合は、「50万円以下の罰金」を科すとしています。

また、勧告や命令を出した際には、違反の内容とともに事業者名も公表する方針を示しています。

この法律の施行を前に公正取引委員会と厚生労働省はことし5月から6月にかけて実態調査を行いました。

新法では、報酬の額を通常よりも著しく低くする「買いたたき」を禁止していますが、「十分に協議を行って報酬を決められなかった」と回答したフリーランスは67.1%に上ったほか、フリーランスからは「報酬額は一方的に決められている」という声や「多くは口約束で、証拠を残すことを嫌がる傾向がある」などの声があったということです。

一方、「新法の内容を知らない」という回答は、フリーランスで76.3%、事業者側で54.5%で、いずれも「建設業」や「医療、福祉」の業種でほかの業種よりも認知度が低い傾向がみられたということで、公正取引委員会は、引き続き法律の普及と啓発を行うことにしています。

また、この調査結果も踏まえ、問題事例の多い業種の集中調査を今年度中に実施するとしています。

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