「やくざになんか、ならなきゃよかった」―。舞台上で絶叫するのは、入れ墨のような柄のアンダーシャツを着た神奈川県警暴力団対策課の刑事。9月上旬、日頃から組織犯罪と対峙(たいじ)する迫力満点の課員や、民事介入暴力に対応する弁護士の計8人で構成する劇団「カブトムシ」が新型コロナウイルス禍による活動休止を経て5年ぶりに上演した。(共同通信=設楽勇太)
物語は県警に摘発されて組長が不在となった暴力団が、資金源として特殊詐欺に手を染めるという設定。組員らは刑務所から出所した組長に「億単位の金が手に入る」と得意げに語るも、最後は一斉に逮捕されてしまう。効果音や舞台装置はないが、身ぶりやせりふには力がこもり観客も見入る。約15分間の劇で、近年増加する投資詐欺などの手口を紹介し、暴力団対策課が捜査に力を入れていることをアピールした。
劇団は、2011年に施行された県暴力団排除条例の内容を分かりやすく伝えようと課員の発案で立ち上がった。企業にクレーム対応の仕方を説明する際のロールプレーを発展させ、劇団名は「B(暴力団)を捕る」のビートルにかけてカブトムシに決まった。主に年1回の県暴力追放県民大会に合わせ、暴力団関係の法改正や、犯罪情勢の変化を踏まえたテーマを取り上げてきた。
練習場所は空き会議室などで特別な設備はない。台本や演出を担当しているのは捜査経験が長い男性警察官で「関心を持ってもらうためコミカルな要素を取り入れ、しっかり伝わるよう工夫する。リアリティーと伝えたいことのバランスが大事」と話す。
練習を重ね、来年の県民大会でも上演する見通し。暴力団対策課の岩瀬大輔暴力団排除対策官は「印象に残りやすい劇という形を通して、課としてのメッセージを伝える場になれば」と意気込んだ。
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