さくピー。こんなかわいらしい名前のスナック菓子がこの夏、発売された。「さくさくとした食感のフルーツピール(果皮)」という意味で、小笠原村で収穫されたレモンの皮を使っている。フードロス削減につながるほか、売り上げの一部は小笠原諸島の自然保護などに充てられる。小さなお菓子に社会貢献への大きな可能性が詰まっている。

小笠原産のレモンを使ったスナック菓子「さくピー」

◆軽やかな食感と甘みのある塩味

小笠原産のレモン

 正式名は「さくピー 小笠原島レモン うま塩味」。果汁を搾った後の皮を真空フライ製法で仕上げた。黄色の1片は幅約2ミリと細く、軽やかな食感と甘みのある塩味が後を引く。おつまみにもなり、商品を手がけた日本果汁(京都市下京区)の河野聡社長は「材料が皮なので、なんとなく罪悪感なくたくさん食べられる」と紹介する。  小笠原村では1970年代にレモンの栽培が始まったとされる。小笠原アイランズ農業協同組合によると、中国にルーツを持つ品種で、果汁が多くみずみずしい。島民からは「島レモン」の愛称で親しまれ、さわやかな風味と甘みのバランスが取れている緑色の段階で収穫する。

◆酎ハイ開発で皮がたくさん出たことに着目

小笠原産のレモンの皮を使ったスナック菓子「さくピー」

 日本果汁と小笠原の縁が生まれたのは、約10年前。都の外郭団体「公益財団法人東京都島しょ振興公社」や宝酒造(京都市伏見区)と一緒に村特産のレモンなどを使った酎ハイを手がけたことだ。今回は公社の協力を得てさくピーを開発した。

「さくピー」に使われるレモンの皮=日本果汁提供

 果汁を搾ると、膨大な果皮が出る。日本果汁によると、果汁100キログラムに対し、皮は130キログラム。1日で最大2500キログラムになるという。この皮を活用して、農家へ収益を還元できないか―。コロナ禍だった2022年、「世の中にないものをつくろう」と開発に着手した。  「島レモンはスパイシーでくせになる味」と河野社長。持ち味を生かしながら、塩味のなじみ方、食感などを吟味し、今の細いチップスへとたどり着いた。

◆社会貢献の新たなビジネスモデルに?

 持続可能な開発目標(SDGs)の輪が広がり、さくピーは、社会貢献のビジネスモデルとしても期待される。農業の担い手不足の中、実際に一般の人も収穫を体験してもらい、日本果汁がさくピーに加工。利益の一部を村や農協に還元していく予定だ。今月は、同社の有志らが、振興公社が募った農業就業体験者とともに、収穫を手伝う。

「さくピー」の発表会に登壇した小笠原村の渋谷正昭村長(右)と日本果汁の河野聡社長=港区で

 7月に都内で開かれた発表会で、河野社長は「非力だが、今回、売り上げの一部を社会に還元するものができた。成功させ、さまざまな産地のものをたくさん販売し、少しでも力になれば」と力を込めた。  同席した渋谷正昭村長は「レモン林のあまい香りの中で」の一節が出てくる小笠原民謡「レモン林」で場を盛り上げた。取材に「果汁による加工品だけでなく、果皮を使った商品も増え、より多くの人に小笠原を認知していただく機会が増え、来島者や島を応援してくれる人が増えると期待したい」と話した。  さくピーは1袋360円。日本果汁のオンラインショップや、竹芝客船ターミナル(港区)内の伊豆・小笠原諸島のアンテナショップ「東京愛らんど」などで購入できる。  ◆文・山下葉月/写真・川上智世  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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