1966年に静岡県のみそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして、強盗殺人罪などで死刑が確定した袴田巌さん(88)に対し、再審(やり直し裁判)で無罪を言い渡した9月26日の静岡地裁判決について、静岡地検は9日、控訴する権利(上訴権)を放棄した、と明らかにした。

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 これにより、逮捕から58年を経て袴田さんの無罪が確定した。確定死刑囚の再審無罪が確定するのは戦後5件目。

 最高検は8日に控訴断念を発表していた。検察トップの畝本直美・検事総長は同日に出した談話で、再審判決が捜査当局による証拠捏造(ねつぞう)を認めたことに「強い不満」を表明。一方、最初の再審請求から今回の再審判決まで43年余りを要したことなどを踏まえ、「袴田さんが長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致した。控訴することは相当ではない」と述べた。

 袴田さんは逮捕後から一貫して無罪を訴えていたが、第2次再審請求を受けて2014年に静岡地裁が再審開始と釈放を決定するまで、47年以上、身体の拘束が続いた。その後も、東京高裁による再審開始の取り消しや、最高裁の審理差し戻しがあり、再審開始が確定するまでに約9年を要した。

 袴田さんは長年の拘禁生活で精神を病み、意思疎通が難しい状態にある。昨年10月から始まった再審公判への出廷は免除された。(金子和史)

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