東京大学の入学式が12日、日本武道館(東京都千代田区)で開かれた。新入生約3千人と、その家族らが出席。式典の様子はインターネットでも配信された。

 藤井輝夫総長は式辞で、物事を「多次元的」に捉える姿勢の重要性や、構造的差別を断ち切る必要性を強調。「多くのひとと出会い、多様な知に触れることで、解決すべき問題の多次元性に思いをはせ、よりよい社会の実現に向け、それぞれの力を発揮していただきたい」と述べた。

 式辞では、多様性を巡る東大自身の現状にも触れ、「東京大学の入学者の性別には、大きな偏りがある。女性をはじめ多様な学生が魅力を感じる大学であるか、多様な学生を迎え入れる環境となっているかも、問わねばならない」と述べた。

 東大では長く、全学部生に占める女性の割合が20%を超えず「2割の壁」と呼ばれてきた。学生における女性比率を30%にすることを目標に掲げるが、学部生の女性割合は2022年度に初めて2割を超えた。今年度の学部入学者3126人に占める女性の割合は、20・7%だった。

 来賓の祝辞では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補に昨年選ばれた外科医の米田あゆさんが登壇。「好奇心を持って新しい一歩を自分で踏み出し、感じ、学んだ経験を大切にしてください」とエールを送った。

 米田さん自身は、東大でヨット部に入部したことが新たな一歩だったといい、ヨット部での経験が、宇宙飛行士候補者選抜試験の閉鎖環境での共同生活に役だったという。「未体験や未開拓の地に足を踏み入れた経験が次の新しい一歩を踏み出す原動力となるはず」と述べ、「一歩を踏み出して挑戦を続けていってください。一緒に頑張っていきましょう」と締めくくった。(植松佳香)

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