全国大会でMVPに選ばれた下川光大さん=岐阜県大垣市で(ぎふ花と緑の振興コンソーシアム提供)
ドウダンツツジの枝を器に挿し、手前にアマランサスやヒペリカムを配していく。ダイナミックな作品が完成すると、観客から拍手がわき上がった。8月末、花いけ男子部のメンバーは秋葉原で開催されたイベント「AKIBAフェス」に同校ビッグバンド部とともに招かれ、花いけバトルを再現した。パフォーマンスと共演する正則学園高校のビッグバンド部=千代田区で
◆秋篠宮ご夫妻、悠仁さまも観戦「文化部のインターハイ」
花いけバトルは、複数の「バトラー」が制限時間内に即興で花材を生け、作品の出来栄えや生ける所作などを点数で競い合う。流派は関係しない。高校生の大会は地方自治体と花卉(かき)業界関係者らによって、2017年から本格的に始まった。 花いけ男子部は8月、岐阜県大垣市で開かれた「文化部のインターハイ」といわれる「第48回全国高校総合文化祭」の花いけバトル部門で優勝した。秋篠宮ご夫妻、長男悠仁さまが観戦され、全国から選ばれた15校が出場。首都圏からは正則学園、千葉県立我孫子高、茨城県立小瀬高が参加した。 大会は「第4回高校生花いけバトル全国選抜大会」にも位置付けられていた。正則学園は第1回から4回連続で出場。過去3回はいずれも3位で、今回は念願の初制覇となった。メンバーは3年下川光大(こうた)さん(17)と土方孝太さん(17)、2年野口想馬さん(17)で、下川さんはMVPにも選ばれた。観客が見つめる中、集中して生ける下川光大さん。全国大会ではMVPに選ばれた=千代田区で
◆「校内を華やかに」の思いから誕生
正則学園に花いけ男子部が誕生したのは19年。部の顧問を務める小嶋徹議(てつのり)教頭(49)が花いけバトル大会出場校の募集チラシを見て、担任をしていたクラスの生徒に声をかけた。「大会に出られなくても、校内を華やかにできるのではないか」。そんな思いに6人の生徒が応えた。 小嶋教頭は指導を卒業生の保護者で「コダカ花店」(文京区)の社長小高勝さん(65)に依頼した。1級フラワー装飾技能士の資格を持つ小高さんは「次男がビッグバンド部で世話になった。少しでもお役に立てれば」と快諾。花材や器などを提供し、外部指導員として生け方や所作を教えている。真剣なまなざしで花材と向き合う土方孝太さん=千代田区で
◆「花を大切に扱う気持ち」を重視
学校を花で飾る活動からスタートしたが、創部の年に地区大会で準優勝。その後も技量を上げ、全国大会の常連校になった。どんな点を重視しながら花を生けるのか、優勝した3人に聞くと、下川さんは「花と枝の一体感。色のグラデーションも重要」、土方さんは「季節感を心がけている」、野口さんは「花を大切に扱う気持ち」と答えた。全国選抜大会で優勝した(左から)土方さん、野口想馬さん、下川さん=岐阜県大垣市で(ぎふ花と緑の振興コンソーシアム提供)
◆部員18人ほとんどが華道経験なし
現在の部員は18人。ほとんどが華道などの経験はなく、「ほかの人と違うことがしてみたい」(野口さん)というのが大半の入部動機だ。小嶋教頭と小高さんは「部員全員が腕を上げている」と目を細める。ただ、大会に出られるのは数人だけ。運動系の部活と同じく、出場する部員を選ぶのが悩みの種という。「強豪」ならではの葛藤だ。 ◆文・桜井章夫/写真・坂本亜由理 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。生ける花材を選ぶ花いけ男子部の生徒=千代田区で
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